クーナ

クルナ：クロアチアの旧通貨

1994年5月30日から2023年1月1日まで、クロアチア共和国で法定通貨として使用されていたクーナ(kn)について解説します。補助通貨単位はリパ(Lipa)で、1クーナ＝100リパでした。ユーロへの移行レートは1ユーロ＝7.5345クーナと設定され、2023年1月1日にユーロに切り替わりました。ISO 4217コードはHRKです。

クルナの名称と歴史

クーナはクロアチア語でテン（マツテン）を意味し、リパはリンデンを意味します。中世、テンの毛皮が貿易に使われていたことに由来する名称です。13世紀のクロアチア王国では、バノヴァツ硬貨にテンが描かれており、これがクーナの通貨としての起源と言えます。

通貨名としてのクーナは、1939年にクロアチア自治州で独自通貨発行計画が立てられた際に初めて登場しました。その後、1941年にはウスタシャ政権下のクロアチア独立国の通貨となり、1945年まで使用されました。この歴史的背景から、1990年代にクーナを復活させる際には、ファシズムとの関連性について議論が巻き起こりました。しかし、クロアチア自治州やクロアチア人民解放国家反ファシスト委員会でも使用されていたことから、ファシズムと単純に結び付けるべきではないとの意見が優勢となり、1993年7月にクーナの復活が発表されました。

1991年6月25日のクロアチア独立宣言後、ユーゴスラビア・ディナールに代わる一時的な通貨としてクロアチア・ディナールが発行されましたが、クロアチア紛争による急激なインフレに見舞われました。この状況下、クロアチア国立銀行は新通貨の発行準備を進め、1994年5月30日、1000ディナール＝1クーナの交換比率でデノミネーションを実施、クーナが正式に導入されました。

2001年以降、クーナの対ユーロレートは1ユーロ＝7～8クーナと安定を保ちました。2013年にはクロアチアがEUに加盟し、ユーロ導入の機運が高まりました。2020年7月にはERM2加盟が承認され、2022年6月には欧州委員会が2023年1月からのユーロ導入を発表。予定通り、2023年1月1日にユーロが導入され、クーナの流通は終了しました。

硬貨

硬貨は1、2、5、10、20、50リパと1、2、5クーナがありました。5リパ以下の硬貨は流通価値が低く、一般的には10リパ以上の硬貨が広く使われていました。ユーロ導入に伴い、2025年末までに中央銀行での交換受付が終了し、価値を失う予定です。

リパ硬貨の表面には植物の図柄、裏面には額面とリンデンの枝が描かれていました。クーナ硬貨の表面には動物の図柄、裏面には額面とテンが描かれており、表面の動植物名は奇数年はクロアチア語、偶数年はラテン語で表記されていました。また、バイメタル貨の25クーナ記念硬貨も発行されていました。

紙幣

紙幣は5、10、20、50、100、200、500、1000クーナがありました。表面にはクロアチアの政治家、詩人、バン（総督）などの歴史的偉人、裏面には各都市の歴史的建築物が描かれていました。5クーナ紙幣は同額面の硬貨があったためほとんど流通せず、2008年に製造が終了しました。500、1000クーナ紙幣も額面が大きかったことやATM非対応などから流通が少なく、改刷も行われませんでした。

発行当初、10クーナ紙幣のデザインがドイツマルク紙幣と酷似していたため、ドイツで悪用される事例が発生し、1995年6月に再デザインされました。偽造防止技術として、マイクロ文字による国歌歌詞、潜像、セキュリティスレッドなどが採用され、2001年と2002年には5～20クーナ、50～200クーナ紙幣の改刷が行われ、パールインキやホログラムが追加されました。これにより、それまでの1993年版紙幣は2007年と2010年に無効となりました。

参考文献

『Stvaranje hrvatske nacionalne valute』クロアチア国立銀行、2014年

関連事項

クロアチアの歴史
クロアチアの経済
クロアチア国立銀行: クーナ（英語）

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