ユーゴスラビア・ディナールとは？意味をやさしく解説

言語	通貨名	複数形
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セルビア語	динар	динари
クロアチア語	dinar	dinari
スロベニア語	dinar	dinarji
マケドニア語	динар	динари

当初、ディナールはセルビアの通貨でした。1918年にセルボ・クロアート・スロヴェーヌ王国が成立すると、ディナールはクロアチア、スロベニア、ボスニア・ヘルツェゴビナでも流通するようになり、クローネ（1ディナール = 4クローネ）と並行して使用されました。1920年からセルボ・クロアート・スロヴェーヌ王国名義の硬貨と紙幣が発行されるまで、セルビア王国のものが使われていました。1929年には国名がユーゴスラビアに変更され、通貨の表記も変わりました。

1931年、為替レートは1米ドル=56.4ディナールに設定されましたが、1933年には44ディナールに変更されています。1937年には旅行者向けのレートとして、1英ポンド=250ディナールが定められました。1941年には、ユーゴスラビアからクロアチア独立国が独立し、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ地域ではディナールと同等のクーナが発行され、ユーゴスラビアを占領したブルガリアのレフ、イタリアのリラ、ドイツのライヒスマルクも流通しました。

1944年の（連邦）ディナール (YUF, 1944-1965)

1944年、ユーゴスラビアが再構成されると、セルビア・ディナール、クロアチア・クーナ、占領国の通貨に代わり、ユーゴスラビア・ディナールが登場しました。交換レートは1ユーゴスラビア・ディナール=20セルビア・ディナール=40クーナでした。1945年5月には、1米ドル=50ディナールの固定レートが設定されましたが、維持されることはありませんでした。

1966年の（ハード）ディナール (YUD, 1966-1989)

1966年 1月1日、通貨が100分の1に切り下げられました。しかし、この通貨も安定せず、年間15〜25%のインフレに悩まされました。1980年代にはインフレが加速し、1990年にデノミネーションが行われました。

1990年の（兌換）ディナール (YUN, 1990-1992)

2回目の通貨切り下げは、1990年 1月1日に行われ、通貨が1万分の1に切り下げられました。この頃、多くの構成国がユーゴスラビアからの脱退を試み、6つの共和国のうち4つが独立を宣言し、独自の通貨を発行し始めました。この通貨は、「ユーゴスラビア社会主義連邦共和国」と複数の言語で記された最後の通貨となりました。

クロアチアのセルビア人支配地域やボスニア・ヘルツェゴビナのセルビア人支配地域では、それぞれユーゴスラビア・ディナールと同等のクライナ・ディナールとスルプスカ・ディナールが流通していました。

1992年の（改正）ディナール (YUR, 1992-1993)

3回目の通貨切り下げは、1992年 7月1日に行われ、通貨が10分の1に切り下げられました。この頃からユーゴスラビア紛争が始まり、経済状況が悪化し、ハイパーインフレーションが始まりました。このディナールは、崩壊後のユーゴスラビア連邦（現在のセルビアとモンテネグロ）の中央銀行から発行されました。

1993年の（十月）ディナール (YUO, 1993)

4回目の通貨切り下げは、1993年 10月1日に行われ、通貨が100万分の1に切り下げられました。しかし、このデノミでもハイパーインフレーションは収束せず、通貨はわずか3ヶ月しか持ちませんでした。

1994年のディナール (YUG, 1994)

5回目の通貨切り下げは、1994年 1月1日に行われ、通貨が10億分の1に切り下げられました。この通貨は、ユーゴスラビア・ディナールの中で最も早く価値が下がり、わずか1ヶ月で交換されることとなりました。

ノビ・ディナール (YUM, 1994-2003)

1994年 1月24日、ノビ・ディナール（「ノビ」は「新しい」の意味）が登場しました。これは、ディナールの切り下げではなく、ドイツ・マルクと等価に固定されました。ノビ・ディナールの登場時、ドイツ・マルクと1994年のディナールの相場は1マルク=1300万ディナールでした。新通貨に固定されていなかったにもかかわらず、1994年のディナールの相場は下落せず、ほぼ1YUM=1200万YUGでした。ちなみに、1990年以前のディナールと比較すると、1 YUM = 1200穣 (1.2×10^27) YUDに相当します。2000年には、「ノビ」の文字が取り除かれました。

ディナールの終焉

1999年11月6日、モンテネグロはユーゴスラビア・ディナールに加え、ドイツ・マルクも法定通貨としました。2000年11月13日には、ディナールが法定通貨から外れ、ドイツ・マルクが唯一の法定通貨となりました。2003年、ユーゴスラビアが消滅し、最後にユーゴスラビア・ディナールを使用していたセルビアがセルビア・ディナールに切り替えたことで、ユーゴスラビア・ディナールの歴史は幕を閉じました。末期の1ディナールは、初期の12穣ディナールに相当します。

硬貨

ディナールの歴史を通じて、様々なデザインと材質の硬貨が発行されました。初期のものは亜鉛、ニッケル青銅、銀で作られていましたが、後の時代ではアルミニウム、黄銅、ニッケル黄銅なども用いられました。また、ハイパーインフレーション期には硬貨の発行が少なくなる傾向がありました。

紙幣

紙幣もまた、ディナールの歴史を反映しており、初期のものはシンプルなデザインでしたが、後年にはより複雑なデザインや偽造防止技術が導入されました。特にハイパーインフレーション期には、非常に高額な紙幣が発行され、デザインの変更も頻繁に行われました。1990年代には、複数のシリーズが発行され、そのデザインは前時代のものを使いまわしたり、加刷したものが存在します。最終的には、セルビア・ディナールに引き継がれることになりました。

参考資料

もう一度検索

ユーゴスラビア・ディナール

ユーゴスラビアの通貨 ディナール：激動の歴史

ディナールの変遷：8つの異なるディナール

言語と表記

歴史

1918年の（セルビア）ディナール (YUS, 1918-1941)