グッド・ナイト (ビートルズの曲)

「グッド・ナイト」（Good Night）は、1968年に発表されたビートルズの9枚目のオリジナル・アルバム『ザ・ビートルズ』、通称「ホワイト・アルバム」に収められた楽曲です。

クレジット上はジョン・レノンとポール・マッカートニーの共作名義ですが、実際の作曲はジョン・レノンによるものです。そして、この曲のリードボーカルは、バンドのドラマーであるリンゴ・スターが担当しています。

楽曲の大きな特徴は、バンドサウンドではなく、プロデューサーであるジョージ・マーティンが手掛けた豊かなオーケストラアレンジが演奏の主体を占めている点です。

作曲の背景

ジョン・レノンは、この曲を当時5歳だった自身の息子、ジュリアンのために、優しい子守唄として書き上げました。ポール・マッカートニーは後に、そのメロディの柔らかさや、ジョンにしては珍しい穏やかな曲調から、自身の作品だと誤解される可能性があるとしつつも、ジョンが息子への子守唄として書いたのだろうと推測しています。さらにポールは、ジョン自身が歌うことで曲のイメージが損なわれると考えたため、リンゴがオーケストラをバックに歌う形になったのではないか、という見方を示しています。

レコーディング

「グッド・ナイト」のレコーディングは、1968年6月28日にEMIレコーディング・スタジオで開始されました。最初のセッションでは、ジョンがフィンガー・ピッキングで演奏するエレクトリックギターの伴奏によるテイクが重ねられました。複数のギターパートがオーバーダブされた後、これらのギターサウンドをまとめたテイクも作成されましたが、最終的にこのギター伴奏によるバージョンは採用されませんでした。

その後、7月22日のセッションで、大規模なオーケストラとコーラスがオーバーダブされました。このオーケストラセッションの前に、リンゴはジョージ・マーティンのピアノ伴奏でボーカルのリハーサルを行っています。また、ジョージ・ハリスンはシェイカーで参加しました。

最終的に完成したテイクのエンディングには、「おやすみ…おやすみ、みなさん…世界中の皆さん…お休みなさい」という、リンゴによる温かい語りが加えられています。この語りの部分は、リンゴがいくつかパターンを試した記録も残っています。

未発表音源などを収録したアルバムにも、この曲のレコーディング過程の一部が収められています。

1996年発売の『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』には、リハーサルの断片と完成テイクを繋ぎ合わせた音源が収録されました。
2018年発売の『ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム) 〈スーパー・デラックス・エディション〉』には、初期のテイクや、リンゴが語りのフレーズを試す際の音源などが収録されています。

評価

発表から時を経て、批評家からの評価も存在します。例えば、2018年には英インデペンデント紙のジェイコブ・ストルワーシーが、アルバム収録曲のランキングにおいて本作を28位に挙げ、「リンゴが歌う平凡な曲」としつつも、ジョージ・マーティンの手によるオーケストラアレンジに触れ、「子守唄がそうであるように、聴き手を眠りに誘うかもしれない」と述べています。

参加メンバーと楽器

完成版の主な参加メンバーと担当楽器は以下の通りです。

リンゴ・スター: リードボーカル
ジョージ・マーティン: ピアノ、チェレスタ、オーケストラ編曲
マイク・サムズ・シンガーズ: コーラス
オーケストラ: ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、フルート、クラリネット、ホルン、ヴィブラフォン、コントラバス、ハープなど

初期の不採用バージョンやリハーサルには、ジョン・レノン（ギター、バッキングボーカル）、ポール・マッカートニー（バッキングボーカル）、ジョージ・ハリスン（バッキングボーカル、シェイカー）なども参加しています。

カバーやメディアでの使用

「グッド・ナイト」は、多くのアーティストによってカバーされています。カーペンターズ、ケニー・ロギンス、リンダ・ロンシュタット、バーブラ・ストライサンド、マンハッタン・トランスファーなどがこの曲を取り上げています。

また、シルク・ドゥ・ソレイユのショーのために制作されたサウンドトラック・アルバム『LOVE』（2006年）では、この曲のオーケストラパートが別のビートルズ楽曲、「オクトパス・ガーデン」の伴奏や、「愛こそはすべて」のコーダ部分に使用されています。

日本国内では、2019年から2020年にかけてTBS系列で放送されたテレビ番組『ダブルベッド』のエンディングテーマとしても採用されました。

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