グドルン・エンスリン

グドルン・エンスリン：教師から過激派テロリストへ

グドルン・エンスリン(1940年8月15日-1977年10月18日)は、西ドイツで活動した過激派組織、ドイツ赤軍(RAF)の中心人物の一人です。彼女は、恵まれた家庭環境で育ちながら、社会運動にのめり込み、最終的にはテロリストとしての人生を送ることになります。その波乱に満ちた生涯は、今もなお多くの人々の関心を集めています。

平凡な少女時代から反体制運動へ

エンスリンは、ルター派の牧師を父に持つ7人兄弟の4女として、バーデン＝ヴュルテンベルク州で生まれました。彼女の父は、保守的な敬虔主義とは距離を置く、リベラルな神学思想を持っていたと言われています。彼女は、交換留学でアメリカ合衆国を経験した後、テュービンゲン大学で学び、国民学校教師の資格を取得。その後、西ベルリンの自由大学でドイツ文学の研究に励み、博士論文の執筆に励んでいました。

しかし、エンスリンの関心は学問だけにとどまりませんでした。彼女は、大学の友人たちと小さな出版社「ステューディオ・ノイエ・リテラトゥーア」を設立し、反原子爆弾を訴えるアンソロジーなどを出版。政治的な活動にも積極的に関与し、ドイツ社会民主党を支持する活動に参加するなど、その活動は多岐にわたっていました。

新左翼運動への参加とドイツ赤軍

エンスリンは、新左翼運動の勃興する中、次第に過激な思想に傾倒していきます。1967年、ベルリンでの反政府デモに参加した彼女は、警察による学生の射殺事件を目の当たりにし、強い衝撃を受けました。その後、アンドレアス・バーダーと出会い、恋に落ち、彼と共に既存社会への反乱を企てます。

1968年、バーダーらと共にデパート放火事件を起こし、逮捕・逃亡を繰り返す中で、新左翼の活動家、ウルリケ・マインホフらと接触し、ドイツ赤軍（RAF）を結成。銀行強盗や爆弾テロなどの過激な活動で社会に衝撃を与えました。RAFは、その過激なテロ活動で多くの犠牲者を出したことから、社会からの強い批判を浴びることになります。

獄中死とその後

1972年に逮捕されたエンスリンは、シュトゥットガルトのシュタムハイム刑務所に収監されました。獄中では、他のRAFメンバーらと激しい抗争を繰り広げ、いわゆる「ドイツの秋」と呼ばれるテロと反テロの激動の時代を象徴する存在となります。1977年10月18日、エンスリンは獄中で死亡しました。公式には自殺とされていますが、その死因については、いまだに多くの議論が交わされています。

エンスリンの生涯と現代への問い

グドルン・エンスリンの生涯は、複雑で、様々な解釈が可能です。教師としての才能、知的な能力を持ちながら、過激なテロリストとなった彼女の人生は、社会と個人の関係、そして暴力と抵抗の問題を私たちに問いかけ続けています。彼女の思想や行動を理解することは、現代社会を考える上で重要な示唆を与えてくれるでしょう。

参考文献

Gudrun Ensslin: „Zieht den Trennungsstrich jede Minute“. Briefe an ihre Schwester Christiane und ihren Bruder Gottfried aus dem Gefängnis 1972–1973.
Ulrike Meinhof: Bambule. Fürsorge – Sorge für wen?
Astrid Proll (Hrsg.): Hans und Grete. Die RAF 67–77.
Stefan Aust: Der Baader-Meinhof-Komplex.
* その他多数の書籍、論文、記事

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