ドイツ赤軍

ドイツ赤軍(RAF): 西ドイツを震撼させた極左過激派組織

ドイツ赤軍(RAF、Rote Armee Fraktion)は、1960年代後半に西ドイツで誕生した極左過激派組織であり、その暴力的な活動は西ドイツ社会に深い傷跡を残しました。別名「バーダー・マインホフ・グルッペ」とも呼ばれ、反帝国主義、反[[資本主義]]、反米を掲げ、西側資本主義の打倒とマルクス主義による世界革命を目指しました。

黎明期: 学生運動から過激派組織へ

RAFの起源は1960年代後半の西ドイツにおける学生運動に遡ります。1967年、イランのシャーの西ベルリン訪問時の抗議活動が暴動に発展し、学生ベンノ・オーネゾルクが警察官に射殺された事件は、学生運動を激化させる大きな転機となりました。この事件を契機に、過激な思想を持つ若者たちが集結し、1968年頃、アンドレアス・バーダーとウルリケ・マインホフを中心とした地下組織「バーダー・マインホフ・グルッペ」が結成されました。

初期の活動は、デパートへの放火など比較的小規模なものでしたが、逮捕と釈放を経て、組織は次第に過激化していきます。1970年には日本の赤軍派に共感を示し、「赤軍派」と改称。レバノンで軍事訓練を受け、高度な爆破技術を習得するなど、テロ活動の能力を高めていきました。

1970年代: 暴力の激化と「ドイツの秋」

1970年代に入ると、RAFは銀行強盗、警官射殺、爆破など、より大規模で暴力的なテロ活動を展開します。1972年には主要メンバーが逮捕されましたが、組織は地下活動に転じ、弁護士らの支援を受けながら活動を継続しました。獄中のメンバーは、ハンガーストライキなど激しい抵抗を続けました。

1977年は特に重要な年となりました。「ドイツの秋」と呼ばれるこの期間、RAFは政財界要人を相次いで誘拐・殺害し、西ドイツ政府を揺るがしました。西ドイツ経営者連盟会長ハンス＝マルティン・シュライヤーの誘拐事件は、政府への最大級の挑戦となりました。この事件に関連して発生したルフトハンザ航空181便ハイジャック事件は、西ドイツ特殊部隊GSG-9による決死の救出劇として記憶されています。ハイジャック失敗と同時に、獄中のバーダーらは自殺しました。シュライヤーも殺害され、この一連の事件は、西ドイツ社会に深い衝撃と恐怖を与えました。

1980年代以降: 冷戦終結と組織の衰退

1980年代に入っても、RAFは活動を続けましたが、1989年のベルリンの壁崩壊と冷戦終結は、組織にとって大きな打撃となりました。東ドイツという資金源と庇護を失ったRAFは、次第に勢力を弱め、メンバーの逮捕が相次ぎました。1990年代には、後継組織と見られるグループが活動したものの、すぐに衰退し、1998年にRAFは解散を宣言しました。

RAFの遺産

RAFの活動は、西ドイツ社会に大きな影響を与えました。数多くの犠牲者を出したテロ行為は、西ドイツ社会に深い傷跡を残し、国家安全保障に対する意識を高めました。また、RAFの活動は、西ドイツの左翼運動や学生運動にも影響を与え、その後の政治状況にも変化をもたらしたと考えられます。

RAFは、その暴力的な活動ゆえに批判の対象となりながらも、世界各国の過激派組織に影響を与えただけでなく、現代社会におけるテロリズムの危険性を改めて認識させる存在となりました。現在でも、RAFの活動は、歴史研究や社会学、政治学の分野で重要な研究テーマとして扱われ続けています。その残した問題や課題は、現代社会においても重要な意味を持ち続けていると言えるでしょう。

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