グラシア (鉄道車両)

グラシア (Gracia)

グラシアは、1989年（平成元年）から2010年（平成22年）にかけて、東日本旅客鉄道（JR東日本）が保有していたジョイフルトレインです。その名の通り、優雅で洗練されたデザインが特徴で、主に団体旅行や臨時列車で活躍しました。2003年（平成15年）には「こがね」へと再改造されましたが、本項ではグラシアとしての経緯と合わせて解説します。

概要

JR東日本東北地域本社（現・仙台支社）では、当時既に「オリエントサルーン」というジョイフルトレインを保有していましたが、より小規模なグループでの利用を想定し、新たなコンセプトに基づいたジョイフルトレインを企画しました。

そのコンセプトは以下の通りです。

気動車ならではの機動性を活かした短編成。
「ソフトエレガント」をキーワードとしたデザイン。
30代から40代の女性を主なターゲットとした、欧風テイストの車両。

これらのコンセプトを実現するため、キハ58系気動車をベースに、郡山工場（現・郡山総合車両センター）で改造が行われ、「グラシア」が誕生しました。

愛称の「グラシア」は一般公募で決定し、スペイン語で「優美」「優雅」「おもしろさ」などを意味します。

編成

グラシアは、以下の3両編成で構成されています。

1号車：キハ59 510（旧：キロ59 510←キハ58 1038） - 定員27名
2号車：キハ29 506（旧：キロ29 506←キハ28 2505） - 定員30名
3号車：キハ59 511（旧：キロ59 511←キハ58 1039） - 定員27名

当初は全車両がグリーン車扱いでしたが、2000年（平成12年）3月30日に普通車に変更され、等級記号も「ロ」から「ハ」に変更されました。

2003年（平成15年）5月5日の「黄金海道ふかひれ号」を最後に運用を終了し、大規模なリニューアル工事を経て、同年6月30日より愛称を「こがね」に改めました。

リニューアルでは、以下の点が変更されました。

塗装をアイボリー、金色、オレンジ色の3色に変更。
座席モケットと絨毯の張り替え。
車椅子スペースと身体障害者対応の洋式トイレの新設。

構造

ここでは、主に改造当初のグラシアの構造について解説します。

車体

先頭の1号車と3号車は、前面形状を大幅に変更して非貫通型とし、前面上部に後退角を設け、窓を拡大しました。前面窓の下には前照灯、尾灯、ヘッドマークを設置し、下部にはスカートを装備。連結器とジャンパ連結器にはカバーが取り付けられました。

中間の2号車は運転台を撤去し、各車両とも運転室側の出入口扉と戸袋窓を塞ぎ、大きな一枚窓を設置しました。客室窓は、防音と隙間風防止のため固定化されました。

車体塗装は、上部をライトグレー、裾部をチェリーレッドとし、白色と青色の細いストライプが加えられました。

車内

客室は通路を端に寄せ、リクライニングシートを一方に1人掛け、他方に2人掛けで千鳥配置とし、270度まで回転可能で45度ごとに固定できます。客室の前後端には28型のモニターテレビを設置し、ビデオ・カラオケ装置も備えられました。先頭車に設置されたビデオカメラで撮影した列車前方の映像を流すことも可能でした。

先頭運転室はガラス張りの半室構造に改装され、運転室を撤去した中間車とともに左側のデッキを撤去しました。先頭車のデッキ跡には展望室が設置され、前面と側面の窓から展望を楽しめるように。中間車にはカウンターテーブルと公衆電話を備えたラウンジが設けられました。

和式トイレ・洗面所は、1号車では添乗員室と荷物置き場に、2号車では洋式トイレと化粧室に変更されました。

台車・機器

台車は改造前と変わらず、動力台車はDT22C形、付随台車はTR51C形を装備。エンジンは出力250PSのDMF11HZに換装されました。冷房装置はAU13A形分散式冷房装置を搭載し、台数を削減。冷房用発電セットは、4VK発電用エンジンとDM83形発電機を引き続き使用しました。

運用

グラシアは、1989年（平成元年）10月31日に落成し、小牛田運転区（現・仙台車両センター小牛田派出所）に配置。同年11月11日から営業運転を開始し、臨時列車や団体列車を中心に活躍しました。

2003年（平成15年）5月5日の運行をもって改装のため一旦運用を離れ、同年7月19日より「こがね」として営業運行を再開しました。

「こがね」としての運用

「こがね」としてリニューアル後も、様々な臨時列車で活躍しました。

主な列車は以下の通りです。

こがねふかひれ（仙台 - 気仙沼）
こがねドリーム（秋田 → 仙台）
湯けむりこがね（仙台 - 鳴子温泉 - 新庄）
ありがとうこがね（仙台 → 気仙沼）
さよならこがね（気仙沼 → 仙台）
只見雪まつり号（会津若松 - 只見）
花回廊オープニング（新潟 - 米沢 ）
こがね花回廊（米沢 - 新潟）
こがね浜街道（仙台 - 原ノ町）
こがね奥久慈（水戸 - 常陸大子）
尾瀬フラワー（仙台 - 沼田）

2010年（平成22年）6月17日には、同年12月26日の「ありがとうこがね」「さよならこがね」を最後に運用を終了することが発表され、2011年（平成23年）7月19日に郡山総合車両センターへ配給回送後、フィリピンへ輸出されました。

現在では、フィリピン国鉄の首都圏通勤車両として活躍しています。

トラブル

2005年（平成17年）8月には、気仙沼線で走行中に逆転ミッションが脱落するトラブルが発生。しばらくの間休車状態となりました。また、2010年8月29日には、上り「こがねふかひれ」号で車内灯と空調設備が停止するトラブルが発生しました。

関連項目

ジョイフルトレイン
アルファコンチネンタルエクスプレス：JR北海道のジョイフルトレイン。グラシアと同様にキハ59・29形をベースとしている。

参考文献

交友社『鉄道ファン』1990年1月号（通巻345号）

脚注

注釈
* 出典

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