グラティテュード作戦

グラティテュード作戦：太平洋戦争における南シナ海の戦い

グラティテュード作戦（Operation Gratitude）は、1945年1月にアメリカ海軍第38任務部隊によって南シナ海を中心に行われた一連の作戦です。ルソン島の戦いを支援するために実行されました。この作戦は、アメリカ海軍がそれまでほとんど進入しなかった南シナ海に大規模な空襲を仕掛け、日本側に大きな損害を与えたことで知られています。

作戦の背景

1944年末、レイテ島の戦いでの勝利とミンドロ島の制圧により、アメリカ軍はルソン島攻略への準備を進めていました。ハルゼー率いる第3艦隊は、神風特攻隊の攻撃に悩まされながらも、制圧任務を継続。1945年1月9日には、キンケイド中将率いる第7艦隊がリンガエン湾に7個師団、175,000名の上陸を成功させました。

ハルゼーは、カムラン湾に停泊している戦艦「伊勢」と「日向」を中心とする日本艦隊を警戒していました。12月25日の礼号作戦で日本艦隊が味方勢力圏に侵入したことを受け、リンガエン湾への補給路が脅かされる可能性を懸念していました。

太平洋艦隊司令長官のニミッツは、コブラ台風で第38任務部隊が大損害を受けたハルゼーの指揮能力に不安を感じていました。査問委員会でハルゼーに非があると認定されたものの、国民的人気を考慮して更迭は見送られました。ニミッツはハルゼーにマッカーサーとの対談での合意事項を伝え、「伊勢」と「日向」を撃沈するための南シナ海への進入許可を求められました。ニミッツは、リンガエン湾上陸が無事終わってからという条件付きで許可を与えました。

作戦の編成

第38任務部隊は、以下の4つの任務群で構成されていました。

第38.1任務群（ラドフォード少将）：空母「ヨークタウン」「ワスプ」など
第38.2任務群（ボーガン少将）：空母「レキシントン」「ハンコック」など
第38.3任務群（シャーマン少将）：空母「タイコンデロガ」「エセックス」など
第38.5任務群（ガードナー少将）：空母「エンタープライズ」「インディペンデンス」（夜間戦闘機部隊）

特に注目すべきは第38.5任務群で、夜間戦闘機のみで構成された専門部隊でした。「エンタープライズ」と「インディペンデンス」は、夜間哨戒を担当しました。

作戦の経過

1月9日～11日: 第38任務部隊はバシー海峡を西航し南シナ海へ進入。時化ている海域で給油艦が接触する事故が発生。
1月12日: インドシナ半島沿岸で複数の輸送船団を攻撃。ヒ86船団をはじめ、多数の艦船が沈没または擱座。サイゴンやサンジャックの陸上施設も空襲。
1月15日～16日: 広東方面と台湾を攻撃。高雄、左営、澎湖諸島を空襲し、香港に避難していたヒ87船団にも損害を与える。
1月21日～22日: 台湾と沖縄を攻撃。台湾では神風特攻隊の攻撃を受け、空母「タイコンデロガ」などが損傷。沖縄では輸送船を撃沈。

作戦の結果と影響

グラティテュード作戦による日本側の損害は甚大でした。輸送船や特設艦船など合計54隻、約24万トンが沈没。艦艇も軽巡洋艦「香椎」を含む18隻が沈没しました。航空機も約200機以上が破壊されました。

アメリカ側の損害は、空母「タイコンデロガ」などの損傷と、艦載機201機、パイロット167名を失ったことでした。

本作戦により、日本側は南方からの資源輸送が著しく困難になり、ヒ船団のような大規模船団を組むことができなくなりました。その結果、日本軍は小規模な船団輸送に切り替えざるを得なくなり、資源不足が深刻化しました。また、本作戦後、日本側は「南号作戦」や「北号作戦」といった資源輸送作戦を発動せざるを得なくなりました。

アメリカ側にとって、グラティテュード作戦は南シナ海の制海権を確立し、その後の作戦を有利に進める上で重要な役割を果たしました。

結論

グラティテュード作戦は、太平洋戦争における重要な転換点の一つであり、日本側の資源輸送を遮断し、戦争終結を早める一因となりました。この作戦は、アメリカ海軍の戦略的優位性を示すとともに、日本側の苦境を浮き彫りにする出来事となりました。

もう一度検索