グラフ電卓

グラフ電卓とは

グラフ電卓は、グラフの描画、連立方程式の計算、変数を用いた演算など、高度な計算機能を備えた電卓です。関数電卓の機能に加え、グラフ描画機能を持つことから、グラフ関数電卓とも呼ばれます。多くの機種はプログラミングが可能で、ユーザーが科学技術や教育向けにカスタマイズしたプログラムを作成できます。大型ディスプレイを搭載し、複数行のテキストや計算結果を表示できるのが特徴です。

歴史

1985年、カシオが初の商用グラフ電卓「fx-7000G」を発売しました。その後、各社が新機能を搭載したモデルを開発しています。

カシオ: アイコンメニュー、多色グラフ、SDカードによるメモリ拡張、教科書風の入力出力、バックライト、フルカラー高解像度バックライトディスプレイ、視認性スコアによるデザイン向上などを実現。
シャープ: タッチスクリーン、数式エディタ、リバーシブルキーボードなどを搭載したモデルを発売。
[ヒューレット・パッカード]]: [[数式処理システム]を備え、代数式を解析的に扱えるモデルを開発。逆ポーランド記法(RPN)/逆ポーランドLisp(RPL)を採用する一方、一般的な入力方法も導入。
テキサス・インスツルメンツ: 大容量メモリ、高速プロセッサ、USB接続機能などを搭載。教育市場をターゲットとしたモデルを多く展開。

機能

[数式処理システム]

一部のグラフ電卓には、数式を記号的に処理するCASが搭載されています。これにより、因数分解、展開、簡単化などの操作が可能になり、数値的な近似なしに正確な答えを得ることができます。CAS搭載機は「記号計算機」とも呼ばれます。

研究室用途

グラフ電卓は、温度計、pH計、気象装置などのセンサーと接続し、データロガーとして利用できます。Wi-Fiなどの通信モジュールを搭載し、監視、データ収集、教師とのやり取りにも活用されます。プログラミング機能により、PCがない環境での開発にも役立ちます。

ゲーム

プログラム可能なグラフ電卓は、ゲーム機としても利用できます。数学的なゲームを作るのに適しており、プログラミングを学ぶ上でも良い教材になります。ただし、サードパーティー製のソフト開発は、試験での不正利用を招く可能性があるため、教育関係者と製造者の間で議論の的となっています。

画面表示

カラー表示、アニメーション、インタラクティブなグラフ描画が可能な機種もあります。製造元は、コンピュータ上でグラフ電卓をエミュレートするソフトウェアを提供しています。

教育におけるグラフ電卓

北アメリカ

高校の数学教師は、授業でグラフ電卓の使用を推奨しています。微積分コースでは必須となる場合もあります。ただし、周期表を内蔵した一部のグラフ電卓は、化学や物理の授業では禁止されています。

アメリカ合衆国大学入学試験委員会

QWERTYキーボードのないグラフ[電卓]]は、AP試験とSAT試験で使用が許可されています。ただし、ACT試験と[[国際バカロレア]認定校ではCASの使用が禁止されています。

イギリス

Aレベル数学コースでは、グラフ電卓の使用が許可されています。GCSE(一般教育証明試験)では、一部の試験を除き、グラフ電卓の使用が許可されています。しかし、GCSEでは金銭的負担からグラフ電卓の使用は一般的ではありません。CASの使用はAレベルでもGCSEでも禁止されています。

フィンランド・スロベニア周辺地域

数学の試験では、CASや3Dグラフィックス機能付きの電卓の使用が禁止されています。ただし、フィンランドでは2012年からCAS電卓の使用が許可されています。

その他の地域

ノルウェーではワイヤレス通信機能付き[電卓]]が一部の大学で禁止されています。オーストラリアでは州によって方針が異なり、ビクトリア州では試験での使用が許可されていますが、西オーストラリア州やニューサウスウェールズ州では制限があります。中国やインドでは初等・中等教育で電卓の使用が禁止されています。ニュージーランドでは、高性能な代数操作機能を持つ電卓が試験で禁止されています。トルコでは、国際バカロレア]認定校と[[アメリカンスクールを除き、電卓の使用が禁止されています。シンガポールでは、ジュニアカレッジ(日本の高校に相当)でグラフ電卓が必須です。オランダでは、高校の最後の3年間で試験中にグラフ電卓の使用が義務付けられています。イスラエルでは、グラフ電卓の使用が数学試験で禁止されています。

プログラミング

多くのグラフ電卓は、ユーザーがプログラムを入力・実行できます。プログラムは、電卓内蔵のエディタやプログラミングツールで作成できます。PCでプログラミングし、ケーブルやメモリーカードで転送することも可能です。初期の電卓は磁気カードにプログラムを保存していましたが、メモリ技術の進化により内蔵ストレージやメモリーカードが利用されるようになりました。グラフ電卓では、テキストで書かれたプログラムの要素が数値トークンに置き換えられます。プログラミング言語は、キーストロークマクロ言語、BASIC、メーカー独自の言語、またはアセンブリ言語などがあります。

一部の機種では、電卓のOSとして独自OS、MS-DOS、Windows CE、Linuxなどが搭載されています。

ほとんどのグラフ電卓には、Microsoft Excelと連携できるスプレッドシート機能が搭載されています。

注釈

グラフ電卓は、教育現場での活用が進む一方、試験での不正利用やプログラミング学習の難しさなど、課題も抱えています。

参考文献

Dick, Thomas P. (1996). Much More than a Toy. Graphing Calculators in Secondary school Calculus.
Ellington, A. J. (2003). A meta-analysis of the effects of calculators on students' achievement and attitude levels in precollege mathematics classes.
Heller, J. L., Curtis, D. A., Jaffe, R., & Verboncoeur, C. J. (2005). Impact of handheld graphing calculator use on student achievement in algebra 1: Heller Research Associates.
Khoju, M., Jaciw, A., & Miller, G. I. (2005). Effectiveness of graphing calculators in K-12 mathematics achievement: A systematic review.
National Center for Education Statistics. (2001). The nation's report card: Mathematics 2000.

関連項目

関数電卓
携帯電話ゲーム
GraphCalc
携帯情報端末
プログラム電卓
カシオのグラフ関数電卓
テキサス・インスツルメンツ署名鍵論争
数学アート
グラフ電卓の機能がある数学のソフトウェア
GeoGebra
Desmos

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