グラーム・カーディル・ハーン

グラーム・カーディル・ハーンの生涯

グラーム・カーディル・ハーン（生年不詳 - 1789年3月）は、北インドのアフガン系ローヒラー族に属する族長であり、その生涯は波乱に満ちたものだった。彼はローヒラー族の族長、ザービター・ハーンの長男で、またナジーブ・ハーンの孫でもある。彼の活動は主に18世紀の中頃から終わりにかけてのムガル帝国の権力移動の中で展開された。

族長の地位と陰謀の関与

1785年1月、父ザービター・ハーンの死去に伴い、グラーム・カーディル・ハーンは族長としての地位を受け継いだ。1787年7月、彼はラージプートのアンベール王国やマールワール王国の連合軍と共に、マハーダージー・シンディアの軍と対峙することになった。この戦いはラールソートの戦いと呼ばれ、グラーム・カーディル・ハーンは見事に勝利を収めた。

彼の勝利によって、マハーダージー・シンディアは権力を失い、シャー・アーラム2世を巡る政治構図が複雑化する。彼はまた、女帝マリカ・ウッザマーニー・ベーグムとも接触し、彼女の陰謀に加担することになる。マリカは彼女の継子アフマド・シャーを皇帝に据えようと画策しており、グラーム・カーディル・ハーンは共に皇帝を孤立させるべく、120万ルピーの協力金を受け取る。

デリー占領と暴虐

1788年7月18日、彼はローヒラー族の軍を率いてデリーに進軍し、捕らえた皇帝と皇子たちから武器を奪った。そして、7月30日にはシャー・アーラム2世を廃位し、彼自身の傀儡「ジャハーン・シャー」を帝位につけた。これを契機に、彼の軍は皇宮内での略奪や暴行を繰り返し、権力の座に居座った。

特に残忍な出来事が彼の統治下で起きた。彼はシャー・アーラム2世を盲目にさせ、その眼球を抉るという残虐行為を行った。彼はその際、皇帝に厳しい言葉を投げつけ、自身が「神の下す罰」を実行する存在であると信じていたという。さらに、彼は死者が出るほどの食料不足を無視し、年貢の取り立てを優先していた。彼の冷酷さは宮廷にも及び、協力者であったマリカ・ウッザマーニーですらも、彼の支配下では徹底的な収奪の対象となった。

デリー撤退と最期

しかし、彼の快進撃は続かず、2ヶ月後にはデリーの食糧事情が悪化し、敵軍の接近に直面した。1788年10月2日、彼は奪った財宝 ₹2億5000万とともにデリーを撤退せざるを得なかった。撤退後、シンディア家の軍がデリーに入り、皇帝を保護したことになった。

その後、彼は追及され、捕えられた結果、1789年3月に殺害された。彼の死によって、彼の統治は終焉を迎え、弟グラーム・ムイーヌッディーン・ハーンが後を継いだものの、逃亡を余儀なくされる。

彼の残虐行為は、歴史に深い痕跡を残し、時代を象徴するような存在として語り継がれることとなった。

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