アンベール王国

アンベール王国、またはジャイプル藩王国は、現在のインド、ラージャスターン州に位置した歴史あるヒンドゥー王朝です。11世紀末に成立し、その後のインド史において重要な役割を果たしました。この王国は、1300年以降にキルハン・デーヴが王位を継承したことで、その名が知られるようになりました。

16世紀には、バール・マル王がムガル帝国の皇帝アクバルに娘ジョーダー・バーイーを嫁がせ、帝国との強固な同盟関係を築きました。この結婚は、両国間の政治的、文化的交流を促進し、その後の歴史に大きな影響を与えました。また、マーン・シング王は、ベンガル地方、ビハール地方、オリッサ地方への遠征を通じて、ムガル帝国の東方への領土拡大に大きく貢献しました。彼の軍事的な才能は、帝国を支える上で不可欠でした。

18世紀には、ジャイ・シング王が皇帝アウラングゼーブの皇位継承に重要な役割を果たしました。さらに、シヴァージーの討伐にも参加し、プランダル条約を締結させることで、事実上、彼を降伏させました。その後、シヴァージーはアーグラへと向かいました。アウラングゼーブの死後、アンベール王国は徐々に独立性を強めていきました。

ジャイ・シング2世の時代には、首都がアンベールからジャイプルへと遷都されました。ジャイプルは、計画的に建設された都市であり、現在もその美しい景観を保っています。また、ジャイ・シング2世は天文学者としても知られ、ジャンタル・マンタルと呼ばれる天文観測施設を建設しました。これは、当時の高度な天文学の知識を今に伝える貴重な遺産です。

1818年4月2日、ジャガト・シング王の時代に、アンベール王国はイギリスと軍事保護条約を締結し、ジャイプル藩王国としてイギリスの支配下に置かれることとなりました。これにより、王国は間接的な支配を受けながらも、一定の自治を保ちました。1947年8月15日、インド・パキスタン分離独立に伴い、ジャイプル藩王国はインドに併合され、その歴史に幕を閉じました。

アンベール王国の歴史は、インドの歴史における重要な一章であり、その影響は現代においても多岐にわたります。この王国は、その政治的な動向や文化的遺産を通じて、後世に多くの教訓とインスピレーションを与えています。

カチワーハー氏族

アンベール王国は、カチワーハー氏族によって支配されていました。カチワーハー氏族は、ラージプートの一派であり、その歴史は古代にまで遡ります。彼らは、この地域において強力な勢力を誇り、数多くの王国を築き上げました。アンベール王国もその一つであり、カチワーハー氏族の繁栄を象徴しています。

参考文献

• - 辛島昇『新版 世界各国史7 南アジア史』山川出版社、2004年。
• - 小谷汪之『世界歴史大系 南アジア史2―中世・近世―』山川出版社、2007年。
• - サティーシュ・チャンドラ 著、小名康之、長島弘 訳『中世インドの歴史』山川出版社、2001年。
• - ビパン・チャンドラ 著、栗原利江 訳『近代インドの歴史』山川出版社、2001年。

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