グリーゼ832c

グリーゼ832cは、地球から約16.1光年離れたつる座の方向に位置する、恒星グリーゼ832を周回する太陽系外惑星です。この惑星は、グリーゼ832星系内で最も恒星に近い軌道を公転しています。

発見

グリーゼ832cは、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学の研究チームによって発見されました。この発見は、惑星の重力によって引き起こされる主星のわずかな動きの変動を観測することにより実現しました。この手法は、ドップラー分光法と呼ばれるもので、惑星が恒星に与える重力的な影響を捉え、間接的に惑星の存在を検出します。

物理的性質

グリーゼ832cは、地球の約5.4倍の質量を持つと推定されています。公転周期は35.68日と短く、これは主星グリーゼ832に非常に近い軌道を回っていることを意味します。グリーゼ832星系には、2009年に木星サイズの惑星グリーゼ832bが発見されていましたが、グリーゼ832cはそれよりも内側の軌道に位置しています。

主星からの距離は、太陽と地球間の距離の約0.16倍程度（太陽と水星の距離の約40%）と、非常に近い場所にあります。通常、液体の水が存在可能なハビタブルゾーンは、グリーゼ832の場合0.132AU〜0.343AUの範囲とされています。一見するとグリーゼ832cはこのハビタブルゾーンの外側にあるように思えます。しかし、主星グリーゼ832は太陽よりもずっと暗いため、ハビタブルゾーンの位置は太陽系とは異なり、グリーゼ832cはハビタブルゾーン内に収まる可能性も指摘されています。

ただし、グリーゼ832cは地球の5倍以上の質量を持つため、その強い重力によって濃い大気を保持している可能性があります。この濃い大気は、熱を閉じ込める温室効果を引き起こし、惑星表面が灼熱の環境になっている可能性も考慮されています。もしそうであれば、グリーゼ832cは、地球の高温惑星である金星をさらに大型にした「スーパービーナス」のような惑星であると言えるでしょう。

地球との比較

グリーゼ832cは、質量や軌道において地球とは大きく異なる性質を持っています。地球の5倍以上の質量を持つため、重力が非常に大きく、大気の組成や圧力も地球とは大きく異なると考えられます。また、公転周期が短く、主星からの強い放射を受けるため、表面温度も地球とは比較にならないほど高温である可能性があります。このため、グリーゼ832cは、地球のように生命が生存できる環境である可能性は低いと考えられています。

脚注

AU: 天文単位。
ハビタブルゾーン: 惑星の表面に液体の水が存在しうる領域。

関連項目

惑星の居住可能性
居住するのに適した太陽系外惑星の一覧

もう一度検索