グリーゼ832

グリーゼ832

グリーゼ832（Gliese 832）またはGJ 832は、地球からつる座の方向に約16光年離れた場所に位置する赤色矮星です。この恒星は、質量と半径が太陽の約4割程度とされており、比較的小さく暗い星です。およそ5万3千年前には、現在よりも地球にわずかに近い、約15.71光年の距離に位置していたと考えられています。

惑星系

グリーゼ832の惑星系には、現在までに少なくとも1つの惑星が存在することが確認されています。

グリーゼ832b

2008年9月、グリーゼ832の周囲を公転する太陽系外惑星、グリーゼ832bが発見されました。この惑星は、木星に似た巨大ガス惑星で、ほぼ円形の軌道を描いて主星の周りを回っています。ドップラー分光法によって発見され、主星に0.95ミリ秒程度の揺れを引き起こすことから、アストロメトリ法での検出も期待されています。発見当時、主星との角距離は、エリダヌス座ε星とその惑星bに次いで大きなものでしたが、恒星と惑星のコントラストの都合上、直接撮影は困難とされています。

グリーゼ832c（存在否定）

2014年には、ドップラー分光法による観測で、グリーゼ832のハビタブルゾーン内に位置するスーパーアース型の惑星、グリーゼ832cが発見されたと発表されました。しかし、後の研究で、この惑星の公転周期が主星の自転周期に近いことが判明し、視線速度の変動が惑星ではなく主星そのものに由来する可能性が指摘されました。さらに2022年の研究では、視線速度の変動が主星の恒星活動に由来する特徴を持つことが明らかになり、グリーゼ832cの存在は否定されました。この結果を受けて、NASA Exoplanet Archiveはグリーゼ832cのステータスを「確認済」から「偽陽性」に格下げし、正式な太陽系外惑星リストから除外しました。

3番目の惑星の可能性

2016年4月には、グリーゼ832系に3番目の惑星が存在する可能性についての研究結果が発表されました。テキサス大学アーリントン校の研究チームによるシミュレーションでは、グリーゼ832bと、かつて存在が示唆されていたグリーゼ832cの間に位置する、軌道長半径が0.25 au から2 auの範囲に、安定して公転できる惑星が存在する可能性があることが示されました。もしそのような惑星が存在するとすれば、その質量は地球の15倍以下と見積もられています。これは、グリーゼ832系が、さらなる惑星を抱える可能性があることを示唆しています。

まとめ

グリーゼ832は、地球から比較的近い距離にある赤色矮星であり、確認済みの惑星グリーゼ832bに加え、以前は存在が示唆されたが否定されたグリーゼ832c、そして未発見の3番目の惑星の可能性など、興味深い天体です。今後の観測によって、この恒星系に関する理解がさらに深まることが期待されます。

脚注

注釈

出典

関連項目

近い恒星の一覧
グリーゼ近傍恒星カタログ

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