グリーンシャトー

グリーンシャトー：競走馬から名繁殖牝馬へ

1974年生まれの競走馬、グリーンシャトー。その名は、日本の競馬史に大きな足跡を残した名繁殖牝馬として知られています。自身は競走馬としては目立った活躍はありませんでしたが、生み出した産駒たちの活躍は、彼女の偉大さを証明しています。本稿では、グリーンシャトーの生涯を競走馬時代から繁殖牝馬時代まで詳細に辿り、そのドラマチックな人生を紐解きます。

競走馬としてのグリーンシャトー

1976年11月、中央競馬でデビューしたグリーンシャトー。重賞への挑戦は叶いませんでしたが、条件戦で着実に勝利を重ね、通算6勝を挙げました。担当調教師であった北橋修二氏によると、気性が繊細で、食欲も旺盛とはいえませんでしたが、勝負強さと道悪での巧みな走りを見せる馬だったといいます。1979年4月、競走馬としてのキャリアに幕を閉じました。

繁殖牝馬としての華麗なる転身

競走馬引退後、グリーンシャトーは北海道新冠町の錦野牧場で繁殖牝馬としての新たな人生を歩み始めます。しかし、錦野牧場は経営難に陥り、1987年に倒産。グリーンシャトーは複数の牧場を転々とすることになります。1986年の秋からはマエコウファームで繋養されていましたが、同年7月、腸捻転により急死するという悲劇に見舞われました。神経質な気性のため、その年は種付けをせずに休養させていた矢先の出来事でした。

伝説の産駒たち

グリーンシャトーの生涯における最大の魅力は、何と言ってもその繁殖成績です。錦野牧場の倒産と時を同じくして、彼女の産駒であるタマモクロスが驚異的な連勝街道を歩み始めます。タマモクロスは重賞6勝（うちGI3勝）、天皇賞（春）、天皇賞（秋）、宝塚記念を制覇し、1988年にはJRA賞年度代表馬、最優秀5歳以上牡馬に輝きました。さらに、もう一頭の産駒であるミヤマポピーも1988年のエリザベス女王杯を制し、グリーンシャトーの名を不動のものにしました。

幾多の困難を乗り越えて

錦野牧場の倒産後、牧場にいた繁殖牝馬たちは各地に散り散りとなりました。グリーンシャトーの消息は確認されましたが、他の牝馬たちの行方は不明のままです。錦野昌章氏は、経済的な苦境からグリーンシャトーを手放す決断を余儀なくされたことを、「彼女を殺したようなものだ」と語っています。グリーンシャトーは神経質で気性が激しく、他人には従わなかったため、新たな環境への適応に苦しんだ可能性も指摘されています。

マエコウファームの松本和夫氏は、グリーンシャトーの素晴らしい体格を絶賛し、その才能を惜しみました。そして、タマモクロスの宝塚記念制覇後のインタビューで、「あれほどの牝馬は大手の牧場にだってそうざらにはいません。例えタマモクロスが走っていなくても、そのうちいい仔を出したはず」と語っています。その言葉通り、同年秋にはミヤマポピーがエリザベス女王杯を制したのです。

忘れがたいエピソード

グリーンシャトーは、北橋修二氏が騎手時代に乗っていた馬でもありました。北橋氏とグリーンシャトーの間には、忘れがたいエピソードがあります。北橋夫人がプレゼントしたメロンを食べたところ、グリーンシャトーの大好物となり、それ以降、飼料を食べなくてもメロンだけは食べたという逸話が残っています。

グリーンシャトーの血脈

グリーンシャトーは、競走馬としては平凡な成績に終わりましたが、繁殖牝馬として、日本の競馬界に計り知れない貢献を果たしました。彼女が生み出したタマモクロスとミヤマポピーは、日本の競馬史にその名を刻む名馬となり、その血統は現在も脈々と受け継がれています。グリーンシャトーという一頭の牝馬の生涯は、競走馬、そして繁殖牝馬としての成功と苦悩、そして早すぎる死というドラマチックな物語であり、多くの関係者、そして競馬ファンに深い感銘を与え続けています。

参考文献

* サラブレッド探偵局（編） 編『競馬SLG 名牝ファイル2』光栄、1995年。ISBN 4-87719-215-8。

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