グレイト・ギタリスト・ハント

ローリング・ストーンズの「グレイト・ギタリスト・ハント」：ミック・テイラー脱退とロン・ウッド加入の物語

1974年、ローリング・ストーンズのリードギタリスト、ミック・テイラーが脱退を表明しました。当時、既に1975年の北米ツアーが予定されていたため、ストーンズは後任ギタリストを迅速に見つける必要に迫られました。この状況下で開始されたのが、後に「グレイト・ギタリスト・ハント」と呼ばれることになるギタリスト選抜セッションです。

ミック・テイラーの脱退は、バンド内での音楽性や制作の方向性の違い、そしてキース・リチャーズの薬物依存問題がバンドに及ぼす影響への懸念などが背景にあったとされています。テイラーは、自身の音楽的ビジョンをストーンズの中で実現することが難しいと感じ、家族への悪影響も考慮した上で脱退を決意したのです。 彼の脱退は、バンドメンバーにも、周囲のスタッフや関係者にも予想外の出来事だったようです。

ミック・ジャガーは、ロバート・スティッグウッド主催のパーティ会場でテイラーから突然の脱退宣言を受けました。その場に居合わせたロン・ウッドに、ジャガーは慌てて加入を打診しますが、当時フェイセズのメンバーだったウッドは即答を避けました。

急遽、1975年の北米ツアーはロン・ウッドをサポートメンバーとして開催されました。その後、ストーンズは本格的に後任ギタリスト探しを開始します。これが「グレイト・ギタリスト・ハント」です。選抜セッションは、1976年にリリースされたアルバム『ブラック・アンド・ブルー』のレコーディングと並行して行われ、このアルバムにはリチャーズ以外にも複数のギタリストが参加しています。

セッションに参加したギタリストには、最終的にストーンズに加入したロン・ウッド、『ブラック・アンド・ブルー』にクレジットされたハーヴィ・マンデルとウェイン・パーキンスがいます。 さらに、ブートレグで演奏が確認されているジェフ・ベックも候補として挙げられます。他にも、ロリー・ギャラガー、ピーター・フランプトン、スティーブ・マリオットなどが候補に挙がっていたという説があります。

多くのギタリストがセッションに参加したにも関わらず、後任ギタリストはなかなか決まりませんでした。そんな中、ストーンズはロン・ウッドに再び声をかけます。既にフェイセズが解散状態にあり、ストーンズからのオファーを受け入れたウッドは、セッションに参加しました。

ウッドは、ベックとマンデルの間に部屋を割り当てられるという状況から、ストーンズが求めている資質を感じ取ったと語っています。それは、テクニックだけでなく、ストーンズの楽曲をプレッシャーの中でも確実に演奏できる度胸のようなものだったのです。

キース・リチャーズは、ウッドがスタジオに入った瞬間、彼しかいないと感じたと回想しています。チャーリー・ワッツも、ロン・ウッドの加入によって、ストーンズが失いかけていた「威勢のよさ」が復活したと語っています。リチャーズは、『ブラック・アンド・ブルー』に参加したハーヴィ・マンデルやウェイン・パーキンスを正式メンバーとして迎えなかった理由について、アメリカ人であることよりも、ストーンズというバンドに合う「相棒」としての資質を重視したためであると説明しています。

2007年に出版されたロン・ウッドの自伝では、エリック・クラプトンも候補の一人だった可能性が示唆されています。しかし、ウッド自身も過去の記憶があいまいであると述べているため、詳細は不明です。

ジェフ・ベックは、ストーンズからレコーディングセッションのオファーを受け、参加しました。しかし、実際にはバンドへの加入を打診され、断っています。ベックは、ストーンズとの演奏スタイルの違いや、当時制作していたソロアルバム『ブロウ・バイ・ブロウ』の制作を優先したため、加入を辞退したとされています。その後、ジャガーのソロアルバム制作やツアー、ストーンズの50周年記念ライブに参加するなど、ストーンズとの関係は良好に続いています。

このように、「グレイト・ギタリスト・ハント」は、ストーンズの歴史において重要な転換期を象徴する出来事であり、ロン・ウッドの加入によってバンドは新たな時代へと歩みを進めていきました。

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