グレナード・P・リプスコム (原子力潜水艦)

グレナード・P・リプスコム (USS Glenard P. Lipscomb, SSN-685)

グレナード・P・リプスコムは、アメリカ海軍が運用した原子力潜水艦で、艦名はカリフォルニア州の下院議員グレナード・P・リプスコムに由来しています。この艦は、アメリカ海軍の潜水艦として、タリビーに次いで2番目に原子力ターボ・エレクトリック方式を採用しています。試験艦としての側面が強く、同型艦は存在しません。

機関の構造と運用方式

原子力潜水艦の主な機関方式は、一般的に原子力ギアード・タービン方式ですが、グレナード・P・リプスコムはターボ・エレクトリック方式を選択しました。これにより、冷却系から得られる高圧蒸気でタービン発電機を動かし、その発電により電動モーターを駆動して推進力を得ます。従来のギアボックスを排除することで、艦の静音性が向上し、操艦の柔軟性が期待できるというメリットがあります。

ただし、この選択にはトレードオフが存在します。ターボ・エレクトリック方式は電機システムの追加による重量増加や、効率が劣るために速力が低下するという欠点があります。その結果、一般的な原子力潜水艦ではほとんど採用されておらず、旧ソ連やフランスの一部の潜水艦に限定されています。

グレナード・P・リプスコムの設計では、スタージョン級の設計思想が多く流用され、艦体サイズは排水量で20%増加し、全長も約19メートル長くなりました。この巨大化により、パワー不足のS5W原子炉を搭載し、結果的に速力はスタージョン級船体より劣ることが懸念されました。

活動の終焉

こうした技術的な問題に加えて、ターボ・エレクトリック方式の信頼性に疑問視される点もあり、最終的にグレナード・P・リプスコムは1985年までに活動を停止する運命に選ばれました。同時期に運用されていたナーワルは自然循環式原子炉の技術を得意としており、静粛性の向上を試みていたものの、本艦はその道とは対照的な結果を辿りました。

艦の歴史

グレナード・P・リプスコムは1971年6月5日に、コネチカット州グロトンのエレクトリック・ボート社にて起工され、1973年8月4日にリプスコム夫人によって命名され、進水しました。1974年12月21日にはジェームズ・F・コールドウェル艦長の指揮により就役しました。この際、メルヴィン・ライアードが記念スピーチを行ったことも特筆すべき点です。

艦は1990年7月11日に退役し、1997年12月1日に原子力艦再利用プログラムに基づきピュージェット・サウンド海軍造船所で解体されました。

関連艦

グレナード・P・リプスコムと同じくターボ・エレクトリック方式を採用している潜水艦として「タリビー (SSN-597)」があります。また、ナーワル (SSN-671)はほぼ同時に就役し、原潜の静粛化への取り組みを示す艦です。スタージョン級原子力潜水艦は、本艦の設計上の母体に当たります。

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