ピュージェット・サウンド海軍造船所

ピュージェット・サウンド海軍造船所（PSNS & IMF）は、アメリカ海軍が所有する広大な海軍工廠です。約179エーカー（約0.7平方キロメートル）の敷地は、ピュージェット湾に面したシンクレア入江に接し、キトサップ海軍基地ブレマートン別館とブレマートン市に隣接しています。この造船所は、北東太平洋における海軍の主要な拠点であり、ワシントン州内でも最大級の工業施設としての役割を担っています。

主な役割

PSNS & IMFは、海軍艦艇のメンテナンス、近代化、そして技術的な後方支援を専門としています。艦艇の修理や改修、最新技術の導入を通じて、アメリカ海軍の戦力を維持・向上させる上で不可欠な存在です。

歴史

1891年に海軍補給地として設立されたこの場所は、1901年に「海軍工廠ピュージェット・サウンド」と改称されました。第一次世界大戦中には、小型艇から潜水艦、掃海艇、タグボート、給兵艦まで、多岐にわたる艦艇を建造しました。その数は1,700隻の小型艇、25隻の駆潜艇、7隻の潜水艦、2隻の掃海艇、7隻の外航タグボート、2隻の給兵艦に上ります。

第二次世界大戦中は、アメリカ海軍と連合国軍の艦艇の修理・改装に大きく貢献しました。特に真珠湾攻撃で損傷した戦艦「テネシー」、「メリーランド」、「ネバダ」、「カリフォルニア」、「ウェストバージニア」などの修復は、その後の戦局に大きく影響しました。また、幾度も損傷しながらも修理を重ね、太平洋戦争を戦い抜いた空母「エンタープライズ」も、この造船所でその度に修復作業が行われました。

1933年に建設された巨大な緑色のハンマークレーンは、この造船所の象徴的な建造物です。250トンの吊り上げ能力を持ち、高さ250フィート、幅80フィートの大きさを誇るこのクレーンは、艦艇のオーバーホールや、分割された構造物の吊り上げに利用されています。

戦後、造船所は「ピュージェット・サウンド海軍造船所」と改称されました。1950年代には、従来型の空母をアングルド・デッキ化する近代化プログラムを担当し、朝鮮戦争勃発時には、モスボール保管されていた艦艇の再活性化にも従事しました。1950年代末には、新型フリゲートの建造が開始され、1965年には同造船所初となる原子力潜水艦「スカルピン」が建造されました。

原子力艦再利用計画

1990年、海軍はピュージェット・サウンド海軍造船所において、原子力艦の再利用計画（SRP）を承認しました。現在、造船所における作業の約25%は、艦艇の不活性化、原子炉コンパートメントの処分、船体の再利用に費やされています。この計画は、環境に配慮した安全な原子力艦の不活性化と再利用方法を確立しました。また、この造船所には、アメリカ海軍の退役艦艇がモスボール状態で保管されており、必要に応じて再就役できるようになっています。

国定歴史建造物

ピュージェット・サウンド海軍造船所は、その歴史的価値が認められ、1992年にアメリカ合衆国国定歴史建造物に指定されました。

まとめ

ピュージェット・サウンド海軍造船所は、その設立から今日に至るまで、アメリカ海軍の重要な一部として、そして地域の産業を支える存在として、大きな役割を果たし続けています。

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