グレート・アーティスト

B-29爆撃機 グレート・アーティスト：広島と長崎の原爆投下に関わった機体

グレート・アーティスト(機体番号44-27353)は、第二次世界大戦末期、アメリカ軍第509混成部隊に所属したB-29長距離爆撃機です。原爆投下可能な改造が施された15機のB-29(シルバープレート)の一つであり、広島と長崎への原爆投下作戦に深く関わっています。

広島への原爆投下

1945年8月6日、エノラ・ゲイによる広島への原爆投下(リトルボーイ)において、グレート・アーティストは観測機として参加しました。機体には、爆撃による被害状況を科学的に調査するための高度な観測機器が搭載されていました。この任務は、当初小倉市への原爆投下を予定していたグレート・アーティストが、複雑な観測機器の移動に伴う問題を避けるため、エノラ・ゲイと任務と機体を交換した結果でした。

グレート・アーティストの機長を務めたのは、チャールズ・スウィーニー少佐でした。彼の回想によれば、「グレート・アーティスト」という機名は、乗組員に所属していた爆撃手、レイモンド・カーミット・ビーハン大尉への敬意を表したものでした。ビーハン大尉は爆撃照準の腕が非常に優れており、「アーティスト」と呼ばれていました。また、女性にもてることから、もう一つの意味合いとして「女性に対する達人」という意味も含まれていたそうです。

広島上空では、グレート・アーティストは爆撃の瞬間を記録するために、3個のラジオゾンデを投下しました。これらのデータは、爆発の威力を測定する上で重要な役割を果たしました。爆発の瞬間の映像記録にも挑戦しましたが、残念ながら失敗に終わりました。

長崎への原爆投下

8月9日、長崎への原爆投下(ファットマン)作戦では、状況が一変します。長崎への原爆投下を実行したボックスカーの機長フレデリック・ボック少佐は、グレート・アーティストの操縦桿を握り、観測機として長崎上空を飛行しました。このため、後に両機の機長が混同される原因となりました。グレート・アーティストは、当初小倉が原爆投下の目標でしたが、天候不良により長崎に変更された際に、この任務に就きました。

長崎上空でも、グレート・アーティストは3個のラジオゾンデを投下して、爆発威力の測定を行いました。投下されたラジオゾンデは、爆発の衝撃波を測定する装置を搭載しており、貴重なデータを取得しました。

グレート・アーティストの搭乗員

広島と長崎の原爆投下作戦には、それぞれ異なる搭乗員がグレート・アーティストに搭乗していました。広島ではスウィーニー少佐を機長として、長崎ではボック少佐が機長を務めました。それぞれの任務にあたり、熟練の乗組員たちが正確な飛行と観測を担いました。

パンプキン爆弾投下訓練

原爆投下作戦以外にも、グレート・アーティストは[パンプキン爆弾]を用いた訓練任務にも参加しています。1945年7月から8月にかけて、日本各地を目標に複数の訓練飛行を行い、実戦を想定した訓練を繰り返しました。これらの訓練は、後の原爆投下作戦の成功に繋がったと考えられます。訓練中にエンジントラブルに見舞われたこともありましたが、大きな事故に繋がることはありませんでした。

グレート・アーティストのその後

1945年11月、グレート・アーティストは第509混成部隊と共にアメリカ本土へ帰還しました。その後、ビキニ環礁での核実験にも参加しましたが、1948年9月、訓練飛行中にエンジン故障を起こし、グースベイ空軍基地で廃棄されました。

グレート・アーティストのレガシー

現在、グレート・アーティストのノーズアートが描かれたB-29爆撃機が、ホワイトマン空軍基地に展示されています。これは、グレート・アーティストの歴史的重要性と、その精神を受け継ぐ象徴として存在しています。

参考文献

本文中に記載されている文献に加え、様々な文献がグレート・アーティストに関する情報を提供しています。これらの資料は、歴史的背景や技術的詳細を理解する上で役立ちます。特に、乗組員たちの証言や、科学者たちの記録は、当時の状況を詳細に伝える貴重な資料です。

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