エノラ・ゲイ

エノラ・ゲイについて

エノラ・ゲイ（Enola Gay）は、太平洋戦争の終盤において、アメリカ陸軍航空軍第509混成部隊に属するB-29爆撃機であり、原子爆弾の投下任務で歴史に名を刻んだ機体です。この機体は、原爆投下用に特別に改造されたB-29の一つであり、独自の機体番号は44-86292で、ビクターナンバーは82となっています。特に1945年8月6日には、広島市に向けて、原爆「リトルボーイ」の投下を実施し、その後の8月9日には長崎への原爆投下に備えた任務にも関与しました。

機体の概要

エノラ・ゲイは、ネブラスカ州のグレン・L・マーティン・カンパニー ベルビュー工場で製造されました。1945年5月には、ポール・ティベッツ大佐により509混成部隊に配属された後、7月6日にアメリカ本土を出発し、テニアン島に到達しました。ここで原爆を搭載するための機体改造が行われました。機体には当初「ビクターナンバー12」が割り当てられていましたが、その後の任務の性質上、マーキングが変更され誤認防止のために「82」に改められました。

訓練と任務の経過

エノラ・ゲイは約9回の訓練を経て、実際の作戦に移行しました。1945年7月の訓練には、神戸や名古屋を対象とした爆撃が含まれ、パンプキン爆弾を使用した飛行が行われました。この訓練の中で、リハーサルとして模擬原爆を投下する作戦も実施されました。

広島への原爆投下

エノラ・ゲイによる広島への原爆投下は、1945年8月6日のことです。この任務は、事前のブリーフィングを経て実施され、午前8時15分にリトルボーイが投下されました。投下の瞬間、目の前に現れたキノコ雲は、その後の歴史に多大な影響を及ぼしました。投下後、エノラ・ゲイはすぐさま急旋回し、爆撃地点から離脱しました。

戦後の経過

エノラ・ゲイは、戦後しばらくしてからニューメキシコ州に移送された後、スミソニアン博物館に保存されることになりました。1995年には国立航空宇宙博物館での展示計画が持ち上がりましたが、原爆にまつわる歴史的背景を巡って多くの議論と批判が寄せられました。その結果、展示内容は縮小され、機体の簡単な説明に留まりました。

スミソニアン博物館内での管理体制も厳重なもので、監視カメラや警報システムを用いて機体の保護が図られています。誤解を招かないよう、原爆の被害についての説明は省かれているため、その展示方法については賛否が分かれています。2025年には展示内容の刷新が計画されており、原爆投下後の広島や長崎の写真も展示される予定です。

乗組員の構成

エノラ・ゲイの飛行には、多数の乗組員が参加しました。機長はポール・ティベッツ大佐、副機長はロバート・A・ルイス大尉でした。原爆投下の歴史的な瞬間を見守った乗組員の中で、テオドア・ヴァン・カークが最後の生存者として知られています。彼らは原爆投下について様々な見解を持っており、それぞれの思いを抱きながらその後の人生を歩んでいました。

エノラ・ゲイは、今なお多くの歴史的議論を呼ぶ存在であり、戦争の悲惨さと平和の重要性を私たちに教え続けています。この機体の歴史は、単なる飛行機の話を超え、人類の未来に対する深いメッセージを持っているのです。

もう一度検索