グレート・デーン

グレート・デーン：優美な巨人の魅力

グレート・デーンは、その巨体と穏やかな性格で知られる大型犬です。「優しい巨人」や「犬界のアポロン」と呼ばれることもある、気品あふれる犬種です。ドイツ原産で、ジャーマン・シェパードと並ぶ国犬として、またアメリカ合衆国ペンシルベニア州の州犬としても指定されています。アイリッシュ・ウルフハウンドと並び、世界で最も体高のある犬種としても有名で、ギネス世界記録にもその名が刻まれています。

特徴

外観

グレート・デーンは、巨大で力強い体格を持ちながらも、優美で高貴な印象を与えます。オスの体重は54～90kg、メスは45～68kg、体高は76～100cmにも達します。被毛は短く、柔らかく、光沢のある細い毛が密生しています。毛色はフォーン、ブリンドル、ブラック、ブルー、マント、ハールクインと多彩ですが、マールは認められていません。

頭部は細長く、明確なストップと大きめの口吻部を持ち、長方形で明瞭な輪郭が特徴です。表情豊かで、彫りの深い顔立ちをしています。歯牙は強固でよく発達し、シザーズ・バイトです。目は中型でやや落ちくぼみ、丸く暗い色をしており知的な印象を与えます。耳はやや長く、尖った立ち耳ですが、断耳されることも多いです。尾は中くらいの長さで、踝まで届きます。脚は前脚が完全に真っ直ぐで、足は丸く小さいです。平均寿命は7～10年前後です。

ショードッグとして求められる体高や体重はケネルクラブによって異なりますが、一般的には最低体重45～54kg、最低体高71～76cmとされています。最大値は多くのスタンダードで規定されていませんが、大型のオスでは91kgを超える個体もいます。過去には100cmを超えるグレート・デーンがギネス世界記録に認定された例もあります。

被毛

アメリカンケネルクラブでは、フォーン、ブリンドル、ブルー、ブラック、ハールクイン、マントの6色がスタンダードとして認められています。

フォーン: イエローゴールドで、頭部はブルー、眼と眉はブラック。耳や尾の先がブラックの場合もあります。
ブリンドル: フォーンとブラックの斜めの縞模様（タイガーストライプ）。
ブルー: スチールブルー（鉄灰色）。胸や脚先の白い斑点は好ましくありません。
ブラック: 光沢のあるブラック。胸や脚先の白い斑点は好ましくありません。
ハールクイン: 純白の地に黒系の斑点が不規則に散らばる。首は白が好まれます。斑点は小さすぎず、大きすぎず、グレーの斑点や塩胡椒のような斑点は好ましくありません。
マント: ホワイトをベースに、頬から肛門まで体の上部をブラックが覆う。顔の白い斑点は任意で、肩や胸は白が好まれます。

ホワイト、フォーンクイン、マールなどのその他の毛色は、ドッグショーでは認められず、ブリーダーも歓迎しません。「希少色」として販売される場合もあるので注意が必要です。「マウスグレイ」が含まれる場合は、ショーに出陳できません。

断耳

断耳はアメリカでは一般的ですが、ヨーロッパでは禁止または制限されている国が多いです。かつては狩猟時の保護を目的としていましたが、現在ではショードッグとしての威厳ある外観を強調するために実施される場合が多いです。

性格

グレート・デーンは、その堂々とした容姿とは裏腹に、非常に温厚な性格で知られています。「優しい巨人」と呼ばれる所以です。一般的に、他の犬やペット、人間、子供にも友好的ですが、幼少期の適切な訓練が不足していると、飼育者に対して支配的になったり、同性犬に対して攻撃的になったりする可能性があるので注意が必要です。

健康

グレート・デーンは大型犬種特有の健康問題を抱える可能性があります。胃捻転は、迅速な処置がなければ命に関わる危険な疾患です。胃拡張の既往歴がある個体や、近親に胃拡張の既往歴がある個体に対しては、胃を腹壁に縫いつける手術（ガストルペキシー）が行われることもあります。食餌方法や運動量にも注意が必要です。

寿命は比較的短く、10年以上生きることは難しいです。股関節形成不全、拡張性心筋症、先天性心疾患、ウォブラー症候群なども発症する可能性があります。栄養不足によるカンジダ症や、遺伝性疾患による聴覚障害、視覚障害なども懸念されます。全身が白いグレート・デーンは、聴覚障害を持つ割合が高い傾向があります。

歴史

グレート・デーンと似た犬は、古代エジプト、ギリシャ、ローマにも存在したという説があります。マスティフやアイリッシュ・ウルフハウンドの血統を受け継ぐ中世のイノシシ狩猟犬が改良されたとする説や、アラン人によってドイツにもたらされたとする説など、起源については諸説あります。ドイツ原産のブレンバイザーが直接の先祖であると考えられており、現在の血統の約40％を占めている可能性があります。

「グレート・デーン」という名前の起源は18世紀に遡り、フランスのビュフォン伯が出版した博物誌に記載された大型狩猟犬が、デンマーク語で「大きなデンマークの犬」を意味する「le Grand Danois」と呼ばれたのが始まりです。その後、英語に翻訳された際に「Great Dane」となり、イギリスでは「デンマークの犬」として知られるようになりました。第二次世界大戦後、原産国はデンマークからドイツに変更されました。

有名なグレート・デーン

グレート・デーンは、多くのフィクション作品にも登場しています。例えば、『スクービー・ドゥー』のスクービー、『スタートレック』のカーク船長の犬、バトラー、『101匹わんちゃん』のダニーなど、数多くのキャラクターとして愛されています。その他にも、小説や映画、アニメ、ゲームなど様々な作品に登場し、多くの人々に親しまれています。

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