グンマ王国

グンマ王国（グンマおうこく、英: Kingdom of Gumma）は、18世紀にアフリカ東部、現在のエチオピアにあたる地域の南西部に位置するギベ地方に存在した国家です。この地方には、同時期にオロモの人々によって建国された五つの王国、すなわちグンマ、リンム＝エンネリア、ジンマ、ゴンマ、ゲラがあり、これらは総称して「ギベ五王国」と呼ばれていました。

グンマ王国の地理的な位置は、東の国境がディデッサ川の大きく湾曲した流れによって画されており、これは北東に位置するリンム＝エンネリア王国や南に隣接するゴンマ王国、ゲラ王国との境界となっていました。北には多様なオロモ部族が、西にはシダモ族の人々が暮らしていました。今日の行政区分では、オロミア州内のゲチ県とディデッサ県の範囲に概ね重なります。国土は主に標高およそ2000メートルの高原地帯に広がっていました。1880年頃の推定人口は約50,000人とされています。国民はオロモ系の人々であり、勇敢な戦士として知られていました。

経済に関しては、ギベ地方の他の王国と比較して特にゴンマ王国と並んで経済的に恵まれていないという評価がある一方、集中度の高い農業が営まれていたとする見解も示されています。特に国土の中央部では土地が積極的に耕され、農地化が進んでいました。コーヒーを除くソルガム、小麦、大麦、綿花といった作物が広く栽培されており、これはギベ地方の他の王国でも共通する農産物でした。ただし、国土の北部や西部は、国境に近いアルジョ族やノンノ族といった隣接部族からの襲撃にしばしば晒されたため、これらの地域では牧畜も主要な生業となっていました。

グンマ王国の建国については、伝説的な起源と歴史的な経緯が伝えられています。伝説によれば、王国はアダムという名の人物によって1770年頃に創設されたとされています。彼はこの地にやって来て、それまでのサルボラダという王朝の最後の王を退位させたと語り継がれています。歴史家のモハメド・ハッセンは、この伝承が王朝の創始者をイスラム教徒とするために後世に作られた可能性を示唆しています。

より歴史的な視点からは、グンマ王国の祖先は16世紀から17世紀にかけて南からエチオピア高原へと移動してきたオロモ人の一派であると考えられています。この時代は、エチオピア中央部の政治的混乱に乗じてオロモ人の大規模な移動が発生した時期です。オロモ人の主要な二派であるトゥラマとマチャも北上し、トゥラマがさらに北へ進む中、マチャ・オロモは一度西進した後に南へ方向転換し、18世紀後半にはショア地方の南西に位置するギベ地方に定住しました。この定住を通じて、彼らは五つの王国を築き上げましたが、その一つがグンマ王国です。

宗教的には、グンマ王国はイスラム教を受け入れました。特にジャウェ王の時代に、ショアやベゲムデル地方からやってくる商人たちとの関係を深めるため、王自身がイスラム教に改宗し、次第に王国の臣下にもイスラム信仰を奨励するようになりました。グンマ王国は後に至るまでイスラム信仰を堅く守りました。

19世紀後半、周辺王国との関係は複雑でした。1882年には、アバ・ジュビル王が、勢力を拡大していた『4オロモ連盟』に対抗するため、エンネリア、ゴンマ、ジンマの王たちを説き伏せ、『ムスリム連盟』という軍事同盟を結成しました。しかし、この同盟は期待された連携を果たせず、初めから有効に機能しませんでした。特に、アバ・ジュビルの兄アバ・ディジルがオロモ族に捕らえられた際、同盟国からの十分な支援が得られず、エンネリアからの援軍があったものの、アバ・ジュビルは兄の助命のために休戦協定に応じざるを得なくなりました。これにより、彼は同盟諸国からの支持を失うことになります。その後、アバ・ジュビルはジンマ王国を攻撃するという行動に出ました。この時、エンネリアとゴンマはジンマ側に加勢しましたが、グンマ軍はジンマ王国の首都を占領することに成功しました。

『ムスリム連盟』は期待された成果を上げられずに終わりましたが、グンマ王国はイスラム信仰を堅持し続け、他のギベ地方の王国から迫害や困難を逃れてきたイスラム教徒に避難場所を提供しました。

王国の終焉は、エチオピア帝国の拡大期と重なります。1885年、皇帝メネリク2世によるギベ地方への進出により、グンマ王国はエチオピア帝国に併合されました。しかし、王国の歴史はここで完全に終わったわけではありませんでした。最後の王の息子であったフィリサはスーダンに逃れていましたが、1899年に再びグンマの地に戻り、征服者であるエチオピア帝国に対するジハード（聖戦）を宣言し、抵抗を試みました。彼の試みは続きましたが、最終的に1902年に捕らえられ、その後ジンマで処刑され、グンマ王国は完全にその歴史を閉じました。

グンマ王国は、ギベ地方の他の王国と共に、18世紀から19世紀にかけて存在したオロモ系イスラム国家の一つとして、この地域の複雑な歴史において独自の役割を果たしました。

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