ケイマン (MRAP)

ケイマン：対地雷装甲車の進化と多岐にわたる活躍

ケイマンは、アメリカ軍のMRAP（Mine Resistant Ambush Protected）計画に基づいて開発された、6輪駆動の装輪式対地雷装甲車です。その開発経緯、特徴、そして運用状況について解説します。

開発の背景と特徴

ケイマンは、アメリカ海兵隊が主導したMRAPプログラムに応じて、スチュワート・アンド・スティーブンソン社によって開発されました。この車両の最大の特徴は、地雷やIED（即席爆発装置）に対する高い防御性能です。装甲化されたV字型車体は、爆発の衝撃を分散させ、乗員の生存率を高めます。

ケイマンの開発は、同社が開発した中型軍用トラックFMTVと、その装甲化キャブであるLSAC（Low Signature Armored Cab）をベースに進められました。シャーシやサスペンション構造はFMTVとの互換性を維持しつつ、ボンネットトラック型として設計されています。部品の85%に互換性があり、空気圧自動調整システム（CTIS）やABS（アンチロック・ブレーキ・システム）も標準装備されています。

開発中には、スチュワート・アンド・スティーブンソン社の軍用車両部門がアーマーホールディングス社に吸収合併されました。これにより、ハンヴィーの装甲車体パッケージを開発したオガラ・ヘス・アンド・アイゼンハート社や、複合装甲に使用される超軽量ポリエチレン繊維を開発していたインテグレーテッド・テキスタイル・システムズ社の技術もケイマンの開発に生かされることになりました。

制式採用と改良

2007年、ケイマンはアメリカ軍による試験をクリアし、制式採用されました。アメリカ海兵隊と海軍から約1,200両が発注され、その後、アーマーホールディングス社がBAEシステムズ社に買収されたことで、ケイマンはBAEシステムズ・ランド・アンド・アーマメンツ社の製品として供給されるようになりました。最終的には、2,800両以上が生産されました。

IEDの脅威が増大するにつれて、ケイマンにも更なる防御性能が求められるようになりました。そこで、兵員室の両サイドに中空式の増加装甲を装着したケイマン・プラスが開発され、2009年頃から実戦投入されました。また、4×4輪駆動の車体に短縮した兵員室を搭載した、ケイマン・ライトと呼ばれるタイプも開発されました。

2010年には、1,700両のケイマンをケイマンMTV（Multi-Terrain Vehicle）と呼ばれるバージョンアップ型に改修する契約が締結されました。この改修は、装甲車体の強化、エンジン、サスペンション、シャーシフレームの強化など、車両全体に及ぶ大規模なものでした。

アメリカ軍以外での運用

イラク戦争やアフガニスタンからの米軍撤退後、装備定数の削減により、ケイマンは国防総省から払い下げられるようになりました。その結果、アメリカ国内の警察のSWAT部隊などでも運用されるようになっています。

また、2013年からは、アメリカ航空宇宙局（NASA）でも、M113装甲兵員輸送車の後継となる事故発生時の緊急退避用車両として採用されています。これは、宇宙船の事故や緊急事態が発生した際に、宇宙飛行士を安全な場所へ迅速に退避させるためのものです。

海外への輸出

ケイマンはアメリカだけでなく、アラブ首長国連邦にも輸出されています。2014年9月には、4,500両以上のMRAP導入契約が締結され、そのうち1,150両がケイマンでした。

まとめ

ケイマンは、アメリカ軍のMRAP計画に基づいて開発された装甲車であり、地雷やIEDに対する高い防御性能と、兵員輸送能力を兼ね備えています。アメリカ軍での運用だけでなく、警察の特殊部隊やNASAでも採用され、その汎用性の高さを示しています。また、海外への輸出も行われており、国際的な平和維持活動にも貢献しています。

参考文献

MRAP, Modern U.S.Army Mine Resistant Ambush Protected Vehicles, American Special N3011, Jochen Vollert, Tankograd Publishing

外部リンク

BAEシステムズ 公式サイト

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