ケプラー11b

ケプラー11b

ケプラー11bは、地球からはくちょう座の方向におよそ2000光年離れた位置にある太陽系外惑星です。この惑星は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が運用するケプラー宇宙望遠鏡によって発見されました。質量は地球の約1.9倍と推定されていますが、密度は1.72 g/cm3と非常に小さく、地球とは大きく異なる性質を持っています。

発見と命名

ケプラー11bは、ケプラー11惑星系に属する他の5つの惑星（c、d、e、f、g）と同時に発見されました。その成果は2011年2月2日に学術論文として公表され、翌日の2月3日にはNASAが公式に発見を発表しました。この惑星系では、初めて3つ以上の惑星が主星の手前を通過（トランジット）する様子が観測されており、それまでの記録を塗り替える画期的な発見となりました。ケプラー11bという名称は、発見された6つの惑星のうち、主星ケプラー11に最も近い軌道を公転していることから、内側から順に与えられる符号「b」が付けられました。発見されるまで、この天体はケプラー宇宙望遠鏡の観測対象天体を示すKOI（Kepler object of interest）という名称で、KOI-157 b、あるいはKOI-157.06と呼ばれることもありました。

ケプラー宇宙望遠鏡は、太陽系外の地球型惑星をトランジット法を用いて探索することを目的としています。トランジット法では、惑星が恒星の手前を通過する際に恒星の明るさがわずかに変動することを観測し、惑星の存在を示唆する信号を検出します。ケプラー11bについても、この方法で候補が特定された後、その存在を確認するために詳細な再調査が行われました。再調査には、スピッツァー宇宙望遠鏡のような他の宇宙望遠鏡に加え、アメリカのテキサス州やアリゾナ州、ハワイ、カリフォルニア、カナリア諸島などに設置された地上の望遠鏡も活用されました。これらの観測によって、ケプラー11bの存在は確実なものとなりました。また、ケプラー11bとすぐ外側を公転するケプラー11cの間では、互いの重力による影響で軌道共鳴が起こっている可能性が指摘されています。ケプラー11系は、発見された6つの惑星の軌道がほぼ同じ平面上に位置しており、非常に平坦な惑星系であるという特徴も持っています。

軌道の性質

ケプラー11bは、ケプラー11惑星系の中で最も主星に近い軌道を公転しています。その軌道長半径は約1360万キロメートル（0.091天文単位）で、これは太陽と水星の間の距離のおよそ4分の1しかありません。すぐ外側のケプラー11cとの軌道半径の差もわずか224万キロメートル（0.015天文単位）です。ケプラー11bの公転周期は約10日と7時間17分で、軌道離心率は0.045と小さいため、ほぼ円に近い軌道を描いて主星を回っています。ケプラー11cとの軌道共鳴の比率は4:5である可能性が示されています。軌道傾斜角は89.6度とほぼ90度に近い値を示しており、これは地球から見て惑星が主星のほぼ中心近くを通過することを意味します。主星の中心に近い部分を通過するほど、通過する恒星面の距離は長くなりますが、ケプラー11bは公転速度が速いため、恒星の手前を通過する時間は系内の他の惑星よりも短く、およそ4.02時間で通過します。

惑星の同時通過

ケプラー11系では、複数の惑星が同時に主星の手前を通過する現象が時折観測されます。例えば、2010年8月13日には、ケプラー11b、ケプラー11d、ケプラー11eの3つの惑星が同時に主星面を通過する様子が捉えられました。

物理的性質

ケプラー11bの物理的なサイズについては、半径が地球の約1.8倍、質量が地球の約1.9倍と推定されています。ケプラー11惑星系の中では、半径と質量ともに最も小さい惑星です。ケプラー11bが主星ケプラー11の手前を通過する際、ケプラー11の視等級は0.31等級ほど暗くなりますが、これは系内の他の惑星による減光量と比べて最も小さな値です。過去には、半径や質量の推定値にばらつきがあり、特に質量の推定については、ケプラー11bとケプラー11cの相互の重力影響により観測データに不確かさが生じ、地球の約4倍とする報告もありましたが、その後の観測や解析により、現在の推定値に修正されています。

推定される平均密度は1.72 g/cm3であり、これは地球の平均密度（約5.5 g/cm3）と比べてかなり小さい値です。この低密度から、ケプラー11bは鉄のような密度の高い物質が少なく、主に珪酸塩を主成分とする組成を持っていると推定されています。内部に水が存在する場合、天王星型惑星に見られるような「氷」の状態をとっている可能性も指摘されています。また、水素とヘリウムを主成分とする大気を持つと考えられています。ケプラー11bは主星に極めて近いため、表面温度は摂氏627度（約900ケルビン）にも達すると推定される、非常に高温の惑星です。この高温の影響で、かつては水素を豊富に含む大気を持っていた可能性が高いものの、主星からの強い放射を長期間浴びたことにより、その水素の大半が宇宙空間に散逸してしまったと考えられています。すぐ外側のケプラー11cも、同様の過程を経て大気組成が変化した可能性があります。

主星 ケプラー11

ケプラー11bが周回する主星ケプラー11は、はくちょう座に位置する恒星です。質量は太陽の0.961倍、半径は太陽の1.065倍と、質量と半径ともに太陽とよく似た性質を持っています。金属量もほぼゼロであり、この点も太陽と似ています。一般的に、恒星の金属量が高いほど惑星、特に巨大ガス惑星が見つかりやすい傾向があることが知られていますが、金属量が低いケプラー11系でこれほど多くの惑星が見つかったことは注目すべき点です。

ケプラー11は、ケプラー11bを含む合計6つの惑星（b、c、d、e、f、g）を持つことが確認されています。最も外側を公転するケプラー11gを除いた5つの惑星は、太陽系における水星の軌道よりも内側という、主星から非常に近い領域に密集して存在しています。

ケプラー11自体の視等級はKバンドで12.180等級であり、肉眼で観測することはできません。

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