ケプラー11d

ケプラー11d (Kepler-11d)

ケプラー11dは、地球からおよそ2000光年彼方、はくちょう座の方向に位置する太陽系外惑星です。太陽に極めて似た質量と半径を持つG型主系列星、ケプラー11の周囲を公転しています。アメリカ航空宇宙局（NASA）が運用していたケプラー宇宙望遠鏡によって発見され、2011年2月2日にケプラー11系を構成する6つの惑星の一つとしてその存在が公表されました。

発見と命名

ケプラー11dは、ケプラー11系で見つかった他の5個の惑星と同時に、トランジット法を用いて発見されました。これは、惑星が恒星の手前を通過する際に生じるわずかな明るさの変化を捉える観測手法です。発見の成果は2011年2月2日に発表され、翌3日にはNASAからも公式に公表されました。

「ケプラー11d」という名称は、発見されたケプラー11系の惑星に対し、恒星からの公転軌道が内側から順にb、c、d...と符号が与えられたことによります。ケプラー11dは、内側から3番目の軌道に位置していたため「d」が付されました。恒星の名前にある「ケプラー」は、この惑星を発見したケプラー宇宙望遠鏡に由来します。この望遠鏡は、太陽系外の地球型惑星を多数発見することを目的としていました。

惑星の存在は、トランジット観測で得られた恒星の明るさの変化データから確認されました。その後、ヘール望遠鏡やケックI望遠鏡など、複数の地上望遠鏡を用いた詳細な追観測によって、惑星説の確実性が裏付けられました。

軌道の特性

ケプラー11dは、ケプラー11系の惑星の中で恒星から3番目に近い軌道を周回しています。その軌道長半径は約0.155天文単位（au）で、これは太陽と水星の間の距離の約5分の2に相当する、非常に内側での公転です。約22日と16時間半という短い周期で恒星を一周し、軌道の歪みを示す軌道離心率は0.004と、ほぼ真円に近い軌道を描いています。

軌道傾斜角は約89.67度で、惑星が恒星の見かけ上の中心に近い部分を通過することを示しています。ケプラー11dの恒星面通過（トランジット）にかかる時間は約5.58時間で、これはケプラー11系の惑星の中では3番目に長い時間です。興味深いことに、一般的に外側の軌道を公転する惑星ほど通過時間が長くなる傾向がある中で、ケプラー11dと外側のケプラー11eの間でこの順序が逆転する現象が見られます。これは、ケプラー11eが恒星の見かけ上の中心からやや外れた部分を通過するためであり、ケプラー11系の惑星の軌道面が完全に一致しているわけではないことを示唆しています。

なお、ケプラー11系では、複数の惑星が同時に恒星の手前を通過する「同時通過」が時折発生します。2010年8月13日には、ケプラー11b、ケプラー11d、ケプラー11eの3つの惑星が同時に通過する様子が観測されています。

物理的性質

ケプラー11dの物理的な特徴は、主に地球との比較で表されます。推定される半径は地球の約3.1倍、質量は約7.3倍です。これらはケプラー11系の6惑星の中で、質量・半径ともに3番目に大きな値です。特に質量については、軌道が近く半径もほぼ同じケプラー11cと比べると、ケプラー11dの方が2.5倍もの質量を持っています。

恒星の手前を通過する際の明るさの減少率は0.80 ± 0.02等級と観測されており、これはケプラー11系の惑星による減光量としては3番目に小さい値です。

惑星の質量推定値は、論文によって多少幅があります。2011年の公表時点では地球の3.0倍から9.2倍とされていたものの、その後の2013年の研究では5.8倍から8.1倍に絞り込まれました。しかし、2014年の研究では再び幅が広がる報告（4.2倍から9.0倍や、5.61倍から8.87倍など）も見られます。それでも、他の惑星（ケプラー11bやc）と比較すると、ケプラー11dの質量推定精度は高いとされており、これは主に、外側のケプラー11eやfに与える重力的な影響（摂動）を観測することで間接的に質量が求められているためです。

推定される惑星の姿

もしケプラー11dの質量を地球の6.1倍と仮定すると、その平均密度は約0.9 g/cm³となります。これは、太陽系に存在する木星や土星といった巨大ガス惑星の密度と近い値です。しかし、木星や土星が太陽から遠く離れているのに対し、ケプラー11dは恒星に非常に近い軌道を公転しており、その表面温度は推定で419℃（692K）にも達する高温の惑星と考えられています。質量や半径の観点からは、木星型惑星よりも天王星型惑星に近く、「ホット・ネプチューン」に分類されるタイプの惑星と言えます。

このような低い密度は、ケプラー11dが質量の10%を超えるような豊富な量の水素やヘリウムといった軽い元素を含んでいることで説明されます。これは、すぐ内側を公転し、軽い元素の含有量がほとんどないと考えられているケプラー11bやケプラー11cとは対照的な特徴です。

現在の軌道位置を考慮すると、恒星を取り巻いていた原始惑星系円盤は数百万年という比較的短い期間で消滅したと考えられます。そのため、ケプラー11dが現在の組成と質量を持つに至るまでには、非常に速いペースでガスを取り込んで成長した可能性が示唆されています。

恒星ケプラー11

ケプラー11dが周回する恒星ケプラー11は、質量が太陽の約0.96倍、半径が太陽の約1.07倍と、太陽に非常に似た特徴を持つG型主系列星です。金属量（ヘリウムより重い元素の割合）もほぼゼロであり、この点でも太陽と類似しています。恒星の金属量が高いほど惑星が見つかりやすい傾向がありますが、これは金属量が豊富なほど巨大ガス惑星が形成されやすかったり、惑星が恒星近くへ移動しやすくなったりするため検出率が上がることに起因すると考えられています。

ケプラー11系には、ケプラー11dの他にb、c、e、f、gという計6つの惑星が発見されています。最も外側のケプラー11gを除く5つの惑星（b, c, d, e, f）は、いずれも太陽系の水星の軌道よりも内側という、恒星のごく近距離を公転しています。恒星ケプラー11自体の明るさは視等級13.7等と暗く、肉眼で観測することはできません。

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