ケプラー1625b

ケプラー1625b

ケプラー1625bは、地球からおよそ8,000光年離れた、はくちょう座の領域に位置する恒星ケプラー1625の周囲を公転している太陽系外惑星です。この惑星は、その周囲に太陽系外衛星（系外衛星）が存在する可能性が初めて示唆された天体として、科学界で大きな注目を集めました。しかしながら、この衛星候補が実在するかどうかについては、現在も肯定・否定両方の意見があり、最終的な結論には至っていません。

惑星自体の特徴

ケプラー1625bは、NASAのケプラー宇宙望遠鏡による広範な観測データから、2016年に発見された多くの系外惑星の一つとして確認されました。主星ケプラー1625を約287日の周期で一周しており、その軌道は主星から約1億4,661万キロメートル（およそ0.98天文単位）の距離にあります。この軌道位置は、主星ケプラー1625の周囲の「ハビタブルゾーン」（生命が存在しうる環境が保たれる可能性のある領域）内に入っています。惑星の質量については、木星の約3倍であると推測されています。サイズに関しては、当初は木星の約半分とする見積もりもありましたが、その後の研究では木星よりもやや大きいと考えられています。

系外衛星の可能性と議論

ケプラー1625bに関する最大の関心事は、その周囲に系外衛星が存在する可能性が浮上したことです。

最初の兆候: 2017年7月、ケプラー1625bが主星の手前を横切る際（トランジット）に観測された星の明るさの変化を詳細に分析した結果、惑星の半径の約19倍も離れたところに、海王星ほどのサイズを持つ可能性のある別の天体が存在する兆候が見つかりました。

ハッブル望遠鏡による追観測: 2018年10月には、ハッブル宇宙望遠鏡を用いたより精密な観測データに基づく研究が発表されました。この研究チームは、ケプラー1625bの周囲を約22日かけて公転しているとされる系外衛星候補「ケプラー1625b I」の存在を示唆する証拠が得られたと報告しました。推定された衛星候補の性質として、惑星の赤道面に対する軌道傾斜角は約42度から49度、質量は惑星の約1.5%、サイズは地球の約4.9倍、これは海王星の約1.26倍に相当する大きさであるとされました。

衛星候補の特異性: この推定される系外衛星は非常に巨大であり、その組成は海王星のようにガスの性質を持つ可能性が指摘されています。もし実在すれば、太陽系の衛星とは異なる形成過程を経たのかもしれません。また、これほど大きな質量を持つ衛星であれば、さらに小さな天体、いわゆる「孫衛星」を従える重力を持つ可能性も理論上は考えられます。さらに、主惑星であるケプラー1625bがハビタブルゾーン内にあるため、もし孫衛星が存在すれば、その環境が地球に似ている可能性も全くないわけではありません。

将来への期待: 2021年に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡など、将来のより高性能な観測装置による観測によって、この天体の存在が確実になれば、ケプラー1625b Iは人類が初めてその存在を明確に確認した系外衛星となるでしょう。

* 否定的な分析: しかし、2019年4月には、ハッブル宇宙望遠鏡によるデータを用いた新たな分析結果が発表され、系外衛星の存在を示すとされた光度曲線のわずかな変化は、データ処理の際に発生した見かけ上の信号（アーティファクト）であった可能性が高いと指摘されました。この分析結果は、ケプラー1625b Iが実在しない可能性が高いことを示唆しています。

まとめ

現時点では、ケプラー1625bの周囲に系外衛星が存在するかどうかは、まだ確定していません。初めての系外衛星の発見は、惑星系の形成や進化の理解に革新をもたらす可能性を秘めているため、ケプラー1625bとその周囲に関する今後の観測や研究の結果が強く待たれています。

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