ケプラー19

ケプラー19星系

こと座の方向、地球からおよそ720光年の距離に位置する恒星ケプラー19は、太陽よりもわずかに質量の小さいG型主系列星と考えられています。この恒星の周囲には、現在までに3つの太陽系外惑星が確認されており、惑星系の研究対象として注目されています。

ケプラー19bの発見とトランジットタイミング変化 (TTV)

この星系で最初に見出された惑星は、ケプラー19bです。2011年、NASAのケプラー宇宙望遠鏡による継続的な観測データの中から、恒星の手前を惑星が横切る際に生じるわずかな減光（トランジット）を捉えることで発見されました。ケプラー19bは地球のおよそ2.2倍の半径を持つ、比較的サイズの大きな惑星です。主星のごく近く、およそ9日の短い公転周期で軌道を巡っています。

しかし、このケプラー19bのトランジット時刻には、最大で約5分程度ずれる変動（トランジットタイミング変化、TTV）が、約316日の周期で繰り返し観測されました。このTTVは、トランジットを起こす惑星が、その星系内の別の天体からの重力的な影響を受けている場合に発生します。つまり、ケプラー19bの周期変動は、その外側を公転する未発見の惑星からの重力によって引き起こされていると考えられたのです。

TTV法によるケプラー19cの推測とその意義

ケプラー19bのTTVの分析から、その外側に存在する別の惑星の存在が強く示唆されました。主星の手前を通過しない（トランジットを起こさない）この惑星は、ケプラー19cと名付けられました。トランジットタイミング変化を利用することで、トランジットしない惑星の存在や、そのおおまかな軌道要素（質量と公転周期の比など）を推測することが可能になります。トランジットタイミング変化を用いて、トランジットしない新たな惑星の存在を確認できた最初の事例こそが、このケプラー19cでした。これは、太陽系外惑星探査の手法を広げる上で重要な成果でした。

当初、TTVのデータだけではケプラー19cの詳しい特性特定は難しく、質量が木星の6倍未満、公転周期が160日未満という広い範囲しか絞り込めませんでした。様々な可能性が議論されました。

ケプラー19dの発見とケプラー19cの精密な測定

ケプラー19星系の全貌は、2017年の研究でさらに明らかになりました。この研究では、主星の視線速度を測定するドップラー分光法が用いられました。この観測により、ケプラー19星系には、ケプラー19cよりもさらに外側を公転する第三の惑星、ケプラー19dが存在することが確認されました。

2017年のドップラー分光法によるデータと、従来のケプラー望遠鏡によるデータを組み合わせることで、星系全体の惑星の特性をより正確に決定することが可能となりました。この分析の結果、これまで特性が不明瞭だったケプラー19cの質量が、地球のおよそ13倍であると精密に算出されました。これにより、ケプラー19cは海王星に似たサイズの天体である可能性が高まりました。

まとめ

ケプラー19星系は、複数の観測手法を組み合わせることで、その複雑な惑星構成が解明されてきた例です。特に、トランジットしない惑星ケプラー19cがTTVによって初めてその存在を強く示唆されたことは、当時の太陽系外惑星探査において重要な進展でした。現在までに、ケプラー19星系にはケプラー19b、ケプラー19c、ケプラー19dという3つの惑星が存在することが確認されており、それぞれの質量や軌道に関する理解が進んでいます。この星系の研究は、多様な観測技術の連携が系外惑星系の全貌を明らかにする上でいかに重要であるかを示しています。

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