ケプラー22b

ケプラー22b（Kepler-22b、またはKOI-87.01）は、太陽によく似た恒星であるケプラー22の周囲を公転している太陽系外惑星です。地球から約620光年離れた、夜空ではくちょう座の方向に見つかりました。この惑星の発見は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が運用するケプラー宇宙望遠鏡によって行われた、惑星が恒星の前を通過する際のわずかな光の減少を捉える「トランジット法」という観測技術によるものです。特に重要なのは、当時までに確認されていた太陽系外惑星の中で初めて、主星の「ハビタブルゾーン」内をトランジットしながら公転する惑星として報告された点です。ハビタブルゾーンとは、惑星の表面に液体の水が存在しうる温度条件が満たされると推定される領域を指します。

発見の経緯

ケプラー22bの発見は、2011年 12月5日に公式に発表されました。しかし、この惑星が最初にケプラー探査機によって捉えられたのは、探査ミッションが開始されて間もない2009年半ばのことです。トランジット法を用いて惑星の存在を確認するには、少なくとも3回のトランジット現象を観測する必要がありますが、これらの観測は2010年後半までに完了しました。さらに、宇宙望遠鏡であるスピッツァーや、地上からの追加観測によっても、その存在が裏付けられています。

未解明の組成と内部構造

ケプラー22bの半径は、地球の約2.4倍と推定されており、これは太陽系における海王星の約半分に相当する大きさです。発見当時（2011年）の観測データでは、その正確な質量や表面の具体的な組成を特定するには至っていませんでした。しかし、当時の暫定的な見積もりでは、標準偏差1σの範囲で最大地球質量の約36倍、より広範な3σの範囲では最大約124倍という推測がなされていました。これらの質量推定に基づくと、ケプラー22bは最大で地球の35倍程度の質量を持つ「天王星型惑星」（ガスや氷が主体の巨大惑星）である可能性が比較的高いと考えられました。一方で、より控えめな「ベストケース」シナリオとしては、地球の約10倍程度の質量を持つ、巨大な岩石惑星である「スーパー・アース」の可能性も残されています。もし仮に35倍という推定質量が正しければ、惑星の表面重力は地球の約6.1倍、平均密度は14.9g/cm³という非常に高い値になると計算されます。

惑星が主に岩石で構成されているのか、それとも大量の液体やガスに覆われているのかは、その実際の質量によって大きく異なります。いずれにしても、ケプラー22bは地球よりもはるかに大きいため、その物理的な様相は地球とは大きく異なると考えられています。例えば、比較的小さな岩石の核の周囲を、広大な液体の海が取り囲んでいる「海洋惑星」のような姿である可能性も指摘されています。ハビタブルゾーンに位置し、液体の水が存在する可能性が示唆されることから、この惑星は地球外知的生命体探査（SETI）のターゲットとしても強い関心を集めています。

主星ケプラー22との関係

ケプラー22bが周回している主星ケプラー22は、地球から約620光年の距離にある、質量や温度などが太陽と類似したG型の恒星です。ケプラー22bは主星から約0.85天文単位（AU）の距離を公転しており、その公転周期は約289.9日です。この軌道距離は、太陽系に当てはめて考えると、金星の軌道（0.72 AU）と地球の軌道（1.00 AU）のほぼ中間に位置することになります。この距離が、惑星がハビタブルゾーン内に位置すると考えられる主要な根拠の一つです。

ただし、現時点ではケプラー22bの軌道がどのような形をしているのか、つまり円に近いのか、それとも大きく歪んだ楕円形なのかは確定していません。観測されている多くの太陽系外惑星の中には、非常に偏平な楕円軌道を持つものも少なくありません。もしケプラー22bが極端な楕円軌道を描いている場合、公転中にハビタブルゾーンから一時的に外れてしまう可能性も否定できません。

表面環境の推測

ケプラー22bが主星ケプラー22から受けるエネルギーは、地球が太陽から受けるエネルギー量と密接に関わっています。ケプラー22bと主星ケプラー22の平均距離は、地球と太陽の距離よりも約15%短いと見積もられています。一方で、主星ケプラー22自体が放出するエネルギー（光度）は、太陽に比べて約25%小さいことが分かっています。主星からの距離の近さと、主星の光度の小ささという二つの要素が組み合わさることによって、ケプラー22bが主星から受け取るエネルギー量は、液体の水が安定して存在できる温度範囲に収まる可能性が高いと考えられています。

科学的なモデルによる表面温度の見積もりによれば、もしケプラー22bに大気がほとんど存在しないと仮定した場合、その平均表面温度は約-11℃になると予測されます。しかし、もし地球のように大気が存在し、温室効果によって熱が閉じ込められるような環境であれば、平均気温は約22℃に達する可能性も示唆されています。これらの推定は、ケプラー22bが潜在的に生命が存在しうる環境を持つ可能性を示唆するものであり、今後の詳細な観測が待たれます。

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