ケプラー36c

ケプラー36c

ケプラー36c（Kepler-36c、別名KOI-277c）は、地球からはくちょう座の方向へ約1500光年離れた位置にある恒星ケプラー36の周囲を公転する太陽系外惑星です。

物理的特徴

この惑星は、質量が地球のおよそ8.08倍、半径が約3.679倍あります。地表での重力は地球のおよそ6割程度と推定されています。これらの数値から、ケプラー36cは海王星と同程度のサイズを持つガス惑星であると考えられています。平均密度は0.89g/cm³で、これは天王星よりは低いものの、土星よりは高密度です。

組成については、水素やヘリウムが主成分であり、氷が含まれていないという点を除けば、天王星や海王星の組成と酷似しているとされています。もし大気中にメタンが存在する場合、その外観は海王星のように青色に見える可能性が指摘されています。

軌道

ケプラー36cの軌道長半径は、主星ケプラー36から約1919万km（0.1283天文単位）と非常に近い位置にあります。これは、太陽から水星までの距離のおよそ32.5%に過ぎません。この極めて近い距離にあるため、惑星の表面温度はおよそ655℃（928ケルビン）にも達する非常に高温の惑星です。このような惑星は一般的に「ホット・ネプチューン」に分類されます。

この恒星に密着した軌道を、ケプラー36cは約16日と5時間という短い周期で一周します。軌道の形状を示す離心率は0.033を下回り、ほぼ完全な円形軌道に近いことが分かっています。軌道傾斜角は約90度で、後述するケプラー36bとの軌道の傾きの差は2.5度以下と小さいです。

ケプラー36cが主星ケプラー36の手前を通過する現象（トランジット）にかかる時間は約7.443時間です。この通過によって、ケプラー36の視等級は約0.02076%減少します。この減光率は、内側を公転するケプラー36bによる減光率の約2.477倍にあたります。

ケプラー36bとの関係

ケプラー36系には、ケプラー36cと同時に発見されたもう一つの惑星、ケプラー36bが存在します。ケプラー36bは地球の約4.45倍の質量と約1.486倍の半径を持ち、これらの特徴から恐らく岩石質のスーパーアースと考えられています。ケプラー36cと同様に、ケプラー36からの軌道長半径は約1725万km（0.1153天文単位）と非常に近く、表面温度は約705℃（978ケルビン）という高温環境にあります。

特筆すべきは、ケプラー36bが約13.9日、ケプラー36cが約16.2日で公転しており、その公転周期が約6対7という、軌道共鳴に近い関係にあることです。この周期関係の結果、約97日に一度の割合で両惑星が互いに極めて接近（合）します。この際、外側を回るケプラー36cから見ると、内側のケプラー36bが主星の手前を通過する内合のような配置になります。二つの惑星の軌道長半径の差はわずか194万kmしかなく、これは合の際に地球と月の距離のおよそ5倍程度しか離れていないという異常な近さです。

このように惑星同士が近距離で周期的に接近するため、ケプラー36cはケプラー36bから非常に強い潮汐力を受けます。しかし、ケプラー36cがガス惑星であることから、潮汐力によってその外観に大きな変化が生じる可能性は低いと考えられています。一方で、この潮汐力によって惑星内部で発生する熱が、大気の循環を促し、活発な活動を引き起こしている可能性も指摘されています（海王星でも同様の現象が見られます）。

ケプラー36c（低密度ガス惑星）とケプラー36b（高密度岩石惑星）の間には8.35倍もの密度差があります。これほど組成が異なる惑星が、これほど互いに接近した軌道を持つ惑星系は、発見されている中でケプラー36系が最も軌道間隔が狭いケースとして知られています。これは、太陽系における岩石惑星と巨大ガス惑星の関係とは大きく異なります。太陽系内で最も接近している岩石惑星とガス惑星のペアと比較しても、ケプラー36系の惑星は20倍も密接した軌道を周回しています。

なぜこのような極めて接近した軌道に、組成の全く異なる惑星が存在するのか、その形成メカニズムは現在のところ不明であり、天文学者にとって大きな謎となっています。

これほど接近した軌道では、長期的な軌道進化によって惑星同士が衝突する可能性も懸念されます。しかし、数値シミュレーションによる解析では、調べられたケースの91%以上において、今後700万年間に衝突する可能性は低いという結果が得られています。さらに、ランダムな初期条件で100回シミュレーションを行った場合でも、1億4000万年の間に惑星同士が破壊的な接近を経験するケースは発生しないことが示されており、短期間においては比較的安定した軌道にあると考えられています。

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