ケプラー62

ケプラー62

ケプラー62は、地球から約990光年離れたこと座の方向にある、K型主系列星と呼ばれる種類の恒星です。2013年4月18日、アメリカ航空宇宙局（NASA）は、ケプラー宇宙望遠鏡を用いた観測により、この恒星の周囲に5つの惑星が発見されたと発表しました。これらの惑星のうち、ケプラー62eとケプラー62fは、生命が存在可能な環境である「ハビタブルゾーン」の範囲内に位置しており、液体の水が存在しうる地球に似た惑星として大きな関心を集めています。

名称の由来と発見

ケプラー62は、かつては別の天文カタログ名（2MASS J18525105+4520595など）で知られていました。後に、ケプラー宇宙望遠鏡の観測対象を示す「KIC 9002278」、そして惑星候補天体を示す「KOI-701」という符号が与えられました。最終的に「ケプラー62」という名称が付けられたのは、ケプラー宇宙望遠鏡によってその惑星の存在が確認された62番目の恒星であったためです。

これらの惑星は、太陽系外惑星を探す「トランジット法」によって発見されました。この方法は、惑星が地球から見て主星の手前を横切る際に、主星の光の一部が遮られて一時的に明るさが低下する現象（トランジット）を捉えることで惑星の存在を特定するものです。ケプラー62の惑星は全てトランジットを起こす軌道を持っていることが分かっています。

発見された惑星には、主星に近い順にb, c, d, e, fという符号が付けられています。複数の惑星が同時に発見された場合、公転周期が短い（主星に近い）ものから順にアルファベット小文字で命名されるという規則に従ったものです。

恒星の特徴

ケプラー62は、私たちの太陽に比べてやや小さく低温な恒星です。質量は太陽の約69%、半径は約64%で、表面温度は約4,925Kです（太陽は約5,772K）。年齢は約70億年と推定されており、約46億年の太陽よりも古い恒星と考えられています。これらの物理的特徴から、光度は太陽の約2割程度と低く、恒星を構成する金属元素の量（金属量）も太陽の約4割と少ないことが分かっています。

地球から見たケプラー62の見かけの等級は13.8等であり、非常に暗いため肉眼で見ることはできません。

惑星系

ケプラー62の惑星系には、少なくとも5つの惑星（ケプラー62b, c, d, e, f）が存在します。特筆すべきは、これら全ての惑星が地球から見て主星の手前を横切る「トランジット」を起こすことです。これは、惑星の軌道面がほぼ一致しており、地球の視線方向とよく揃っていることを示しています。

トランジット観測からは、それぞれの惑星の公転周期や主星に対する相対的なサイズを直接的に測定することができます。5つの惑星の半径は、最も小さいケプラー62bが地球の約0.54倍、最も大きいケプラー62dが地球の約1.95倍と、地球程度のサイズからそれよりやや大きい範囲に収まっています。

中でも特に注目されているのが、外側から2番目と最も外側にあるケプラー62e（半径 約1.61倍）とケプラー62f（半径 約1.41倍）です。これらは「スーパー・アース」と呼ばれる地球より大きく海王星より小さいタイプの固体惑星である可能性が高く、さらに主星のハビタブルゾーン内に位置しています。

ハビタブルゾーンにあるこれらの惑星では、条件次第で表面に液体の水が存在する可能性があります。例えば、ケプラー62fには適切な量の大気（特に二酸化炭素のような温室効果ガス）が存在することで暖められ、ケプラー62eには雲などが存在することで過熱を防ぐといったシナリオが考えられています。

ただし、現在の観測技術（トランジット法や視線速度法）では、これらの惑星の質量を正確に測定することは困難です。質量の上限値は得られていますが、実際の質量はこれよりもずっと小さいと予測されており、詳細な密度や組成の決定には今後の観測が待たれます。

ケプラー62系、特にケプラー62eとfは、地球外生命探査の観点から、今後の詳細な研究が期待される重要なターゲットの一つです。

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