ケプラー62c

概要

ケプラー62cは、地球から約1200光年離れたこと座の方向にある恒星ケプラー62の周囲を公転する太陽系外惑星です。この恒星系には合計5つの惑星が確認されており、ケプラー62cはその中で恒星から2番目に近い軌道を回っています。その大きさは火星と同程度と考えられており、恒星の手前を惑星が通過する際に生じる、わずかな恒星の光度変化を捉える「トランジット法」という観測手法によって発見されました。発見当時、ケプラー62cはケプラー37bに次いで、既知の系外惑星の中では2番目に小さなサイズであることが特筆されました。恒星に非常に近い軌道を持つため、その表面温度は非常に高いと推定されています。

発見

ケプラー62cを含むケプラー62系の惑星は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が運用したケプラー宇宙望遠鏡の観測データから発見されました。ケプラー宇宙望遠鏡は、恒星面のトランジット現象を検出することを目的として、多数の恒星の光度を継続的に測定しました。最終的な観測対象には、Kepler Input Catalog（KIC）に登録された約5万の恒星が含まれており、その中に恒星ケプラー62も含まれていました。

系外惑星候補の存在が疑われる恒星の詳細な観測は、2009年5月13日から2012年3月17日まで実施されました。ケプラー62cによるものと考えられる恒星光度の周期的な変動が観測データから検出され、その変動が約12.5日の周期で繰り返し起こっていることが確認されました。この周期性と変動のパターンから、ケプラー62cが恒星ケプラー62の周囲を公転する系外惑星であると結論づけられました。ケプラー62cの発見は、ケプラー69系の惑星とともに、2013年4月18日に公式に発表されました。

特徴

質量・半径・温度

ケプラー62cは、その半径が地球の約0.54倍と推定されており、地球よりも大幅に小さいため、「サブアース（sub-Earth）」と呼ばれるカテゴリーに分類される系外惑星です。この推定半径は、太陽系における火星のサイズとほぼ同程度です。恒星に非常に近い軌道を回っているため、その推定される平衡温度、すなわち有効温度は約578ケルビン（摂氏約305度）と非常に高い値を示します。

ケプラー62cが発見された当時、確認されていた系外惑星の中では、月と同程度の大きさであるケプラー37bに次いで2番目に小さな惑星として注目されました。しかしその後、さらに小さい0.0101地球半径のSDSS J1228+1040 bのような系外惑星も発見されています。

ケプラー62cの正確な質量は、現時点ではまだ直接的に測定されていません。しかし、観測データから質量の上限値は地球質量の4倍以下であると推定されており、実際の質量はそれよりもかなり小さく、地球質量の約0.1倍程度である可能性が示唆されています。質量が確定すれば、その密度から岩石惑星かガス惑星かなどの詳細な組成についての理解が深まる可能性があります。

恒星

ケプラー62cが公転している恒星ケプラー62は、こと座に位置するK型の主系列星です。この恒星の周りには、ケプラー62cを含め、合計5つの系外惑星が存在することが確認されています。

恒星ケプラー62自身の特徴を見てみると、その質量は太陽の約0.69倍、半径は約0.64倍と、太陽よりも小型であることがわかります。これは、スペクトル分類がK型であることと一致しています。表面温度も太陽（約5778ケルビン）より低い約4925ケルビンで、太陽よりも温度の低い恒星です。年齢は約70億歳と推定されており、これは太陽の年齢である約46億歳よりも古いことになります。

恒星を構成する元素のうち、ヘリウムよりも重い元素の存在比を示す金属量は、ケプラー62では比較的少なく、太陽の金属量の約42%程度、値としては-0.37という低い値を示しています。放出される光の総量である光度は、太陽の約21%程度と太陽よりかなり暗い恒星です。地球から見た明るさを示す視等級は14.0等級であり、肉眼で観測することは不可能です。

軌道

ケプラー62cは、恒星ケプラー62のごく近傍を公転しており、その公転周期は約12.5日と非常に短いです。軌道の平均的な半径を示す軌道長半径は約0.092天文単位（au）です。これは、太陽と水星の間の距離（約0.387 au）のおよそ4分の1に相当する近さです。

恒星からの距離が非常に近いため、ケプラー62cが恒星から受け取る放射エネルギーの量は、地球が太陽から受ける量の約25倍にも達します。この大量のエネルギー流入が、ケプラー62cの推定される高い表面温度の主な原因となっています。このような厳しい環境は、液体の水が存在する可能性のあるハビタブルゾーンからは大きく外れています。

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