ケプラー78b

ケプラー78b

ケプラー78bは、地球からはくちょう座の方向へ約400光年離れた位置にある太陽系外惑星です。主星であるケプラー78は、太陽よりもやや小ぶりな恒星です。この惑星が特筆される点は、地球と同程度のサイズを持つ岩石惑星として、初めてその組成が確認されたことです。これは、従来の観測では難しかった、地球に似た小さな岩石惑星の物理的性質を詳細に把握する端緒となりました。

物理的特徴と組成

ケプラー78bの物理的特徴については、観測が進むにつれてより正確な値が確定しました。初期の観測では、半径が地球の約1.2倍、体積が半径の3乗に比例するため地球の約1.7倍と推定されました。その後、アメリカとスイスの研究チームがそれぞれ独立して行った精密な分光観測により、主星ケプラー78のわずかな振動（ドップラー効果）を捉えることで、惑星の質量が測定されました。この結果、ケプラー78bの質量は当初地球の約1.7倍と見積もられましたが、最終的には地球の1.86倍であると判明しました。また、半径の精密な測定値は地球の1.173倍となり、これにより計算される体積は地球の1.614倍となりました。体積と質量がほぼ等しいこの値は、ケプラー78bが木星や土星のような主にガスで構成されるガス惑星ではなく、地球と同様に岩石や鉄を主成分とする岩石惑星であることを強く示唆しています。このように、地球に組成が酷似した太陽系外惑星が確認されたのは、ケプラー78bが初めての事例でした。

極端な軌道と環境

ケプラー78bは、その組成が地球に似ている一方で、環境は極めて異なっています。主星ケプラー78からの平均距離はわずか0.0089天文単位（AU）であり、これは太陽・水星間の距離の約1/50に相当します。この極端に短い軌道のため、ケプラー78bは主星の周りをわずか8.5時間という非常に短い周期で公転しています。主星からの強烈な放射を受けることで、表面温度は1500ケルビンから3000ケルビン（摂氏約1200度から2700度）という高温になると推定されています。この温度は岩石をも溶かすほどであり、液体の水が存在する可能性は皆無に等しく、生命が存在できる環境ではありません。

内部構造の可能性

ケプラー78bは、岩石惑星の内部構造に関する研究対象ともなりました。2016年に発表された研究では、ケプラー78bを含む7つの岩石系外惑星（ケプラー10b、ケプラー36b、ケプラー78b、ケプラー93b、CoRoT-7b、HD 219134 b、グリーゼ1132b）の内部構造が調査されました。これらの惑星は、地球の2倍から5倍程度の質量と1.1倍から1.6倍程度の半径を持つ、比較的地球に近いサイズのものです。研究チームは、地球や火星のような岩石惑星に見られる、中心に核、その外側にマントル、最も外側に地殻という三重構造をモデル化したPREM（Preliminary Reference Earth Model）を適用し、これらの惑星の内部構造を推定しました。その結果、ケプラー78bを含む研究対象となった7つの惑星全てが、地球と同様に中心部に鉄などを主成分とする密度の高い核を持ち、その外側にマントル層や地殻層が存在する分化した構造になっている可能性が高いことが示唆されました。これは、地球型惑星が形成される過程で、構成物質が密度の違いによって分離し、層状構造を形成するメカニズムが、他の恒星系においても普遍的に起こりうることを示唆する重要な成果です。

名称

ケプラー78bは、NASAのケプラー宇宙望遠鏡によってトランジット法を用いて発見された惑星です。しかし、ケプラーが発見した多くの惑星候補天体が登録されるKOI（Kepler Object of Interest）カタログには登録されず、比較的早い段階で惑星として確定された数少ない例の一つです。このため、ケプラーの観測対象天体カタログであるKIC（Kepler Input Catalog）ではKIC 8435766bという名称で、また二ミクロン全天サーベイである2MASSのカタログでは2MASS J19345800+4426539bという名称でも知られています。

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