ケルティベリア人

ケルティベリア人：イベリア半島のケルト系民族

イベリア半島に存在したケルティベリア人は、ケルト系諸民族の総称として理解されています。現代のスペイン、ソリア県、グアダラハラ県、ラ・リオハ州などを中心とした地域に居住し、イベリア山地の西側に広がる地域を拠点としていました。古代ギリシャやローマの歴史家、地理学者たちの記録に登場しますが、科学的な研究対象として注目を集めたのは20世紀初頭からです。

彼らの起源は、紀元前6～5世紀頃にイベリア半島に到来したハルシュタット文化を携えたケルト人が、先住民イベリア人と混血・融合したことにあります。このケルト文化は、戦士階級に守られた牧畜民社会を基盤としており、丘上に築かれた要塞（カストロ）を中心とした集落を形成していました。円形の住居が特徴的なこれらのカストロは、イベリア半島北部各地に広がり、ローマ時代まで存続しました。

ケルティベリア人は、高度な土着化を遂げながら、紀元前3世紀以降は独自の政治的単位を形成しました。「オッピダ」と呼ばれる要塞都市を拠点とし、ケルト文化とイベリア文化が融合した独自の文化を築き上げました。サラゴサ県ボトリアやセゲダなどの発掘調査では、ケルティベリア人の砦や墓地が発見され、副葬品から彼らの生活や社会構造が明らかになりつつあります。初期の貴族墓地は、紀元前3世紀以降、戦士の墓地に取って代わられ、副葬品の武器が減少する傾向が見られます。これは、武器の共有化が進んだか、あるいは都市化の進展を示唆している可能性があります。後期オッピダは現代都市の地下に埋もれており、考古学的な調査が困難な状況にあります。

ローマ以前のイベリア半島において、ケルティベリア人は最大の勢力を持つ民族の一つでした。彼らの歴史における最大の転換期は、第二次ポエニ戦争です。カルタゴと同盟し、ハンニバルの軍隊に加わってアルプス越えに参戦しました。カルタゴの敗北後、紀元前195年にはローマに服従しますが、その後も様々なケルティベリア集団間の対立は続き、ローマとの摩擦が絶えませんでした。ヌマンティア戦争では、ヌマンティアがローマ軍によって破壊され、ローマ文化の浸透が加速します。ボトリアで見つかった青銅製のプラークに刻まれた碑文は、この時代の様子を伝える貴重な史料です。初期の碑文は固有の言語を使用していましたが、その後はラテン語に取って代わられました。紀元前80年から72年のセルトリウス戦争は、ローマ支配に対するケルティベリア人の最後の抵抗でしたが、敗北と共に彼らの文化はローマ文化に吸収されていきました。

しかし、ケルティベリア人の痕跡は、スペインの地名に残されています。現在も100カ所以上の地名が、ケルト語起源であると考えられており、彼らの存在を静かに物語っています。考古学的調査の進展と共に、彼らの歴史や文化はさらに解明されていくことでしょう。ケルティベリア人の研究は、古代イベリア半島におけるケルト文化の広がりと、多様な文化が融合・変容していく過程を理解する上で、重要な役割を果たします。

もう一度検索