ケル・グザヴィエ・ルーセル

ケル・グザヴィエ・ルーセル：ナビ派の詩情あふれる画家

ケル・グザヴィエ・ルーセル (1867-1944) は、フランスを代表するナビ派の画家の一人です。1867年、ドイツ国境近くのモゼル県で医師の息子として生まれました。普仏戦争勃発に伴い、家族と共にパリへ移住。1880年に両親が離婚したのち、父親と暮らすことになります。父親の周囲には芸術家が多く、幼い頃から芸術に囲まれた環境で育ちました。

パリの名門校、リセ・コンドルセで学んだルーセルは、そこで後にナビ派の仲間となるエドゥアール・ヴュイヤールやモーリス・ドニと出会います。将来、名高い演出家となるリュネ・ポーとも親交を深めました。彼は後にヴュイヤールの妹と結婚することになります。

美術への道を志したルーセルは、1885年にディオジェーヌ・マイヤールの画塾に入学。その後、1888年には国立高等美術学校（エコール・デ・ボザール）、1889年にはアカデミー・ジュリアンへと進みます。アカデミー・ジュリアンでは、後のナビ派の中核メンバーとなる多くの画家たちと交流を深め、彼らと共にナビ派を形成していくことになります。特にピエール・ボナールとは親しい友人関係を築き、共に活動しました。

1891年にはナビ派の最初の展覧会が開催され、ルーセルの作品も発表されました。1893年には、影響力の高い雑誌「La Revue blanche」で、ルーセル、ヴュイヤール、ボナール、ドニ、ポール・ランソンらが紹介され、注目を集めます。同年、ルーセルは結婚しました。また、友人であるリュネ・ポーが設立した劇団「théâtre de l'Œuvre」の舞台美術制作にも携わり、ボナール、ヴュイヤール、ポール・セリュジエらと協働しました。

1894年から1904年にかけては、ベルギーの美術団体「自由美学 (La Libre Esthetique)」の展覧会やパリのアンデパンダン展に作品を出展。1898年にはヴュイヤールらと共に版画集を出版するなど、精力的に活動しました。1899年にはパリ郊外のエタングルヴィルに移り住み、創作活動に没頭します。

1906年には、ドニと共に地中海沿岸を旅し、エクス＝アン＝プロヴァンスでポール・セザンヌ、サントロペでポール・シニャック、サンクレールでアンリ＝エドモン・クロスといった巨匠たちを訪ね、刺激を受けました。1908年には、ランソンの美術学校で短期間教鞭を執るなど、教育活動にも携わりました。その後も、装飾画などの仕事を行いながら、画家としての活動を続けました。

ルーセルの作品は、ナビ派らしい繊細な色彩感覚と、穏やかで詩情豊かな表現が特徴です。自然や日常生活の風景を、独特の視点と感性で捉えた作品は、見る者に安らぎと感動を与えます。彼の作品は、ナビ派の美術史における重要な位置を占め、現在も高く評価されています。 彼の生涯と作品を通して、ナビ派の芸術とその時代背景をより深く理解することができます。

参考文献
Estelle Guille des Buttes-Fresneau (dir.), Ker-Xavier Roussel (1867-1944) : Le nabi bucolique, Paris/Pont-Aven, Somogy Éditions d'Art/Musée de Pont-Aven, 2011, 176 p., 130 ill. (ISBN 978-2-7572-0466-5).

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