ケヴィン・ローチ

ケヴィン・ローチ（Kevin Roche、1922年6月14日 - 2019年3月1日）は、アイルランド出身のアメリカ合衆国の建築家です。20世紀後半の建築界において、その革新的なデザインと卓越した技術で多大な影響を与えました。

生涯とキャリア

アイルランドのダブリンで生まれたローチは、アイルランド国立大学のユニバーシティ・カレッジ・ダブリンを卒業後、1948年にアメリカへ移住しました。当初はイリノイ工科大学でミース・ファン・デル・ローエに師事しましたが、学費の問題で中退を余儀なくされます。その後、国連本部でのドラフトマンとしての職を経て、同僚の紹介でエーロ・サーリネンの事務所で働くことになりました。

サーリネンは、モダニズム建築の巨匠として知られ、ローチは彼の元で、その創造性と技術を磨きました。1961年にサーリネンが急逝すると、ローチはサーリネンが手掛けていた未完の10件のプロジェクトを引き継ぎ、完成させました。これには、セントルイスのゲートウェイ・アーチ、ジョン・F・ケネディ国際空港のTWAターミナルビル、ワシントン・ダレス国際空港、イリノイ州モリーンのディア・アンド・カンパニー本社ビル、ニューヨークのCBS本社ビルなど、後の建築史に残る数々の名作が含まれています。

1966年、ローチは技術者のジョン・ディンケルーと共同で建築設計事務所「ローチ・アンド・ディンケルー」を設立しました。彼らの最初の主要なプロジェクトは、カリフォルニア州オークランドに建設されたオークランド博物館でした。1969年に完成したこの博物館は、美術館、歴史博物館、自然博物館という三つの施設を、屋上庭園、テラス、中庭、池などを通して一体化させた画期的な設計でした。この他にも、ニューヘイブンのベテランズ・メモリアル・コロシアムなど、数々の重要な建築物を手がけています。

1981年にディンケルーが亡くなった後、パートナーシップは解消されましたが、ローチはその後も建築家としての活動を続けました。1982年には建築界のノーベル賞とも称されるプリツカー賞を受賞、1993年にはアメリカ建築家協会（AIA）ゴールドメダルを受賞するなど、その功績は広く認められています。

2019年3月1日、コネチカット州ギルフォードで96歳でその生涯を閉じましたが、彼の建築作品は今もなお、多くの人々に感動を与え続けています。

主な作品

ケヴィン・ローチの作品は、その革新的なデザインと機能性の高さで知られています。以下に、彼の代表的な作品をいくつか紹介します。

1966年 オークランド博物館（Oakland Museum of California）、カリフォルニア州オークランド
1967年 リチャード・C・リー高校、コネチカット州ニューヘイブン
1967年 フォード財団ビル、ニューヨーク市（12階分の高さの緑に覆われたアトリウムが特徴）
1969年 コロンブス騎士会本部ビルディング（Knights of Columbus Building）、コネチカット州ニューヘイブン
1969年 コロンバス郵便局、インディアナ州コロンバス
1969年 エトナ生命・損害保険会社コンピューター棟、コネチカット州ハートフォード
1971年 パワー・センター・フォー・ザ・パフォーミング・アーツ、ミシガン大学、ミシガン州アナーバー
1972年 ニューヘイブン・コロシアム（New Haven Coliseum）、コネチカット州ニューヘイブン
1973年 ウェズリアン大学芸術センター、コネチカット州ミドルタウン
1974年 マサチューセッツ大学美術センター、マサチューセッツ州アマースト
1974年 カレッジ生命保険会社本社ビル、インディアナ州インディアナポリス
1975年 UNプラザ、ニューヨーク
1978年 ディア・カンパニー西棟、イリノイ州モリーン
1981年 ボルチモア国立水族館、メリーランド州ボルチモア
クインシー・マーケット近代化事業、ボストン
ロチェスター工科大学の多くの施設、ニューヨーク州ロチェスター
ネイションズバンク・ビル（現在のバンク・オブ・アメリカ・プラザビル）、ジョージア州アトランタ
1995年 DNタワー21、東京
* 1997年 汐留シティセンター、東京

建築家としての遺産

ケヴィン・ローチは、その生涯を通じて、数々の革新的な建築物を設計し、モダニズム建築の可能性を広げました。特に、ガラスを多用したデザインと、周囲の環境との調和を重視した建築は、多くの建築家やデザイナーに影響を与えています。彼の作品は、今日でも世界中で高く評価され、その遺産は後世に語り継がれることでしょう。

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