ケープカナベラル宇宙軍施設第40発射施設

ケープカナベラル宇宙軍施設に設けられた第40発射施設（Space Launch Complex 40, SLC-40）は、フロリダ州の同施設北端に位置する主要なロケット発射地点です。この施設は、その長い歴史の中で、アメリカ合衆国の宇宙開発および安全保障において重要な役割を果たしてきました。

最初はアメリカ空軍の管理下にあり、1965年から2005年までの約40年間にわたり、強力なタイタンIIIおよびタイタンIVロケットの打上げに利用されました。この期間中、SLC-40は数多くの重要なミッションを宇宙へと送り出しています。

SLC-40からの最初の打上げは、1965年6月18日に行われたタイタンIIICロケットの試験飛行でした。この初飛行では、二つのトランステージ（上段ロケット）を搭載し、その機能性を検証することが目的でした。タイタンシリーズは、その強力な推力により、大型のペイロードや長距離ミッションに適しており、軍事衛星の他、科学探査ミッションにも用いられました。

特に注目すべき科学ミッションとしては、当発射台から打ち上げられた二機の惑星探査機があります。一つは1992年9月25日に打ち上げられたマーズ・オブザーバー探査機ですが、残念ながらミッション中に通信が途絶し、失敗に終わりました。もう一つは1997年10月15日に打ち上げられたカッシーニ探査機で、これは土星探査における画期的な成果をもたらした、歴史的なミッションとなりました。

タイタンシリーズにとってSLC-40からの最後の打上げは、2005年4月30日に行われたタイタンIV-Bロケットによるものでした。このミッションでは、偵察衛星ラクロス5号が軌道に投入されました。タイタン時代の終焉に伴い、SLC-40の発射塔は役目を終え、2007年末から2008年初頭にかけて解体され、2008年4月27日には制御爆破によって完全に撤去されました。

2007年4月25日、アメリカ空軍はSLC-40を民間宇宙企業スペースX社に貸与することを発表しました。これは、スペースXが開発するファルコン9ロケットの打上げに使用するためです。この決定を受けて、2008年4月からはファルコン9の打上げに対応するための大規模な地上施設建設および改修工事が始まりました。新しい液体酸素およびケロシンの貯蔵タンクの設置、ロケットやペイロードを格納する建屋の建設など、施設の機能は近代化されました。

改修工事を経て、最初のファルコン9ロケットは2008年末にSLC-40に到着し、2009年1月10日には初めて発射台に据え付けられました。そして、2010年6月4日、ファルコン9ロケットの記念すべき初飛行がSLC-40から行われました。この処女飛行では、Dragon Spacecraft Qualification Unitが軌道へと投入されました。

SLC-40は現在、スペースX社のドラゴン宇宙船の主要な発射施設として機能しています。ドラゴン宇宙船は、2011年に退役したスペースシャトルに代わり、国際宇宙ステーション（ISS）への物資輸送を担っており、SLC-40はその重要な出発点となっています。スペースXは、2010年12月8日にドラゴンの最初の試験飛行を成功させ、さらに2012年5月22日には、商業補給ミッションとして初めてISSとのドッキングに成功しました。これらの成功は、SLC-40の新たな時代における重要性を決定づけました。

しかし、SLC-40の歴史には困難もありました。2016年9月1日、ファルコン9ロケットの打上げ前試験である静止燃焼試験の最中に、発射台に設置されていたロケットの2段目から爆発炎上するという事故が発生しました。この事故により、ロケット本体と搭載されていた衛星は失われ、発射施設も大きな損傷を受けました。幸いにも人的被害はありませんでしたが、施設の復旧には時間を要しました。

事故からの復旧後、SLC-40は再び稼働を開始し、現在もファルコン9ロケットを使用した多様なミッション（ISS補給、商業衛星打上げ、スターリンク衛星コンステレーション構築など）の重要な拠点として活発に利用されています。その歴史はタイタン時代からファルコン時代へと引き継がれ、アメリカの宇宙開発における中核的な役割を担い続けています。

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