ケープ・カイロ鉄道

ケープ・カイロ鉄道：南北をつなぐ夢の跡

ケープ・カイロ鉄道は、アフリカ大陸を南北に縦断することを目指した未完成の鉄道路線です。この鉄道構想は、19世紀末の植民地支配の時代にさかのぼり、イギリスのセシル・ローズが提案しました。彼は南アフリカのケープタウンから北にエジプトのカイロまで、イギリス帝国の植民地を結ぶネットワークを築くことを目指しました。

現在、ケープ・カイロ鉄道の計画の半分以上は完成していますが、スーダンとウガンダの領域にはまだ多くの未開通部分が残されています。この未完成の状態こそが、この鉄道路線の複雑な歴史を物語っています。

歴史的背景

ケープ・カイロ鉄道の構想は、イギリスのアフリカにおける植民地政策とは切り離せません。19世紀のイギリスは、南部アフリカでの植民地拡大を進める一方、地域を南北に貫通する交通ネットワークの必要性にも目を向けました。この鉄道は、軍隊の移動や入植者の交通手段としても重要視され、地中海沿岸諸国との貿易を活性化させる手段であると考えられました。

しかし、鉄道の建設には様々な課題が立ちはだかり、長大な距離や多様な地形・気候だけではなく、他のヨーロッパ列強との政治的な対立も障害となりました。特にフランスやポルトガルは、アフリカ全体における植民地のつながりを目指しており、イギリスとの摩擦を生んでいました。また、ボーア戦争などの地域紛争も鉄道建設を難航させる要因となりました。

第一次世界大戦後、イギリスが旧ドイツ領東アフリカの一部を委任統治するようになったことで、鉄道建設が再開される可能性が高まったものの、戦争による財政的な影響は大きく、計画は進展しませんでした。その後、アフリカ諸国が独立を果たすと、ケープ・カイロ鉄道の構想は徐々に意義を失っていきました。

現在の状況

21世紀に入り、ケープ・カイロ鉄道に類似した構想が再浮上しています。中国は、アフリカの東部諸国を結ぶ鉄道網を整備し、モンバサからナイロビ、ウガンダ、ルワンダまでをつなぐ「東アフリカ鉄道マスタープラン」を進めています。この計画は、かつての帝国主義的な考え方に疑問を投げかけ、現代のアフリカ諸国における経済効果と必要性の再評価が求められる場面です。

現行路線の状況

北部

エジプトでは、1856年に開通したアレクサンドリアからカイロの鉄道があり、現在はアスワンまで延伸されています。ナイル川を経由してスーダンのワジハルファへと連絡しており、ハルツームを通じて南へ進む鉄道網も存在しています。

ウガンダ鉄道

ウガンダ鉄道は、東アフリカでの鉄道の重要な部分を構成しており、カンパラからモンバサやダルエスサラームまでの路線が整備されていますが、1977年の共同体解散により各国の国有鉄道に分かれています。

タンザン鉄道

タンザニアのダルエスサラームからザンビアのカピリ・ムポシまで結ぶタンザン鉄道は、1976年に中国の援助で開通され、東アフリカと南部アフリカを結ぶ重要な交通路となりました。

結び

ケープ・カイロ鉄道は、植民地時代の野心が生んだ未完成の鉄道であり、その歴史は今日のアフリカにとって非常に重要な教訓を提供しています。地域の国々が協力して新たな鉄道網を築く中で、かつての夢が再び現実となる可能性も秘めています。

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