ケーリアン

V号対空戦車ケーリアン（Flakpanzer V Coelian）

V号対空戦車ケーリアンは、ナチス・ドイツが第二次世界大戦中に開発した対空戦車で、その名称は開発を行ったラインメタル・ボルヅィヒ社の秘匿名称に由来しています。この車両は、主にV号戦車パンターD型を基に設計され、37mmの機関砲を2門並列に装備することが計画されました。しかし、開発の過程で火力の不足が問題視され、最終的には計画が中止となったため、完成した車両は存在しません。

開発の背景

ケーリアンは、ドイツ軍においてクーゲルブリッツと並ぶ本命の対空戦車として位置づけられていましたが、パンターの車体を用いることが決定された後、開発内容は変更を余儀なくされました。この変更は、計画の途中で火力が不十分と判断されたためで、敗戦に間に合うことはありませんでした。

1942年9月2日、クルップ社のエンジニアたちは、ケーリアン試作の検討を行い、その結果として車両の重量は約31トンとなり、パンターの履帯や走行装置を流用する計画が立てられました。さらに、エンジンにはレオパルトを使用することが決定され、最終的にVFW（対空試作戦車）と呼ばれるようになりました。1943年1月には、試作車両に折り畳み式の装甲板を装備することも考慮され、呼称はVFW IIに改められましたが、試験が済むまでは改修は先送りされました。

当時の対空戦闘に関する報告によれば、敵航空機が搭載する火器は3cmから5cm程度で、高度1,000mからの攻撃が主流でした。急降下爆撃機は約1,500mから降下し、精度の高い対空射撃が求められ、そのためには非常に多くの砲弾を消費する必要がありました。この現実を背景に、ドイツ軍は従来の戦車に大型対空火器を搭載することを断念し、自衛用の機関銃を搭載する方法に変更することになりました。

その後、1943年6月にはパンターの車体を用いた対空戦車41の開発が決定され、10月にはさらなる試作が進められましたが、VFW IIについてはパンターII型の車体へと変更が行われました。1943年12月には航空省と空軍総司令部がクルップ社との契約を交わし、試作対空軽戦車（VFWL）の開発が許可されたほどです。

そして1944年には、3.7cm高射砲を搭載する砲塔の開発が進められますが、製造の難しさから計画は遅延し、やがてその存在意義が問われるようになります。火力不足から搭載砲を5.5cmに増強することが要求されるものの、必要な試作型の完成は達成されず、最終的に1945年1月に話し合われた結果、開発は中止される運命にありました。

最終的な評価と影響

ケーリアンのデザインは、後に登場するM247サージェント・ヨークに影響を与えたと言われていますが、さまざまな設計案や搭載火器の変更が平行して進められたため、最終的にはその設計の意義が見失われることとなりました。最終的には数種類の試作案が検討されるも、モックアップを越えることはありませんでした。こうした歴史は、当時の戦局や技術的な制約が対空戦車の開発にいかに影響したかを物語るものとなっています。

以上の経緯から、ケーリアンはドイツの対空戦車としては実現しなかったものの、当時の技術や戦略を反映した興味深い試みであったと言えるでしょう。

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