対空戦車

対空戦車とは

対空戦車は、戦車用車台に機関砲や対空ミサイルなどの対空兵器を搭載した装甲車両です。自走式対空砲の一種ですが、自走砲との区別は時代や国によって曖昧な場合があります。

主な目的は、機動力を活かして前線部隊に随伴し、航空機からの攻撃を防ぐことです。しかし、通常の戦車に比べて装甲が薄く、対戦車戦闘には不向きです。また、対空戦車が必要とされる状況は、航空優勢を失い戦局が不利な場合が多く、その際は航空機や他の対空兵器の生産が優先され、対空戦車の配備は後回しになりがちです。

近年、攻撃ヘリコプターの対戦車ミサイルの射程が伸び、機関砲の射程外から一方的に攻撃される危険性が指摘されています。さらに、高価な火器管制装置の搭載は対空戦車の価格を押し上げ、中小国だけでなく先進国でも十分な数を揃えるのが難しい状況です。

このような状況に対処するため、小型ミサイルを搭載したハイブリッド化や、機関砲弾の射程延伸化が進められています。しかし、ミサイル搭載に特化すれば高価な対空戦車は不要という意見もあり、安価な軽車両にミサイルを搭載する動きも出てきています。一方で、ミサイルは電子妨害に弱く、対地攻撃には不向きであるため、機関砲は電子妨害が効かない点や地上目標への掃射が可能な点で依然として有効です。また、機関砲はミサイルに比べて近距離での反撃能力にも優れています。

各国の対空戦車

対空戦車の保有・運用は、特にドイツや日本など一部の国に限られています。

第二次世界大戦

ドイツ国防軍: 制空権を失ったドイツでは、I号戦車をベースにしたI号対空戦車や、IV号[[戦車]]をベースにしたメーベルワーゲン、ヴィルベルヴィント、オストヴィント、クーゲルブリッツなどが開発されました。ただし、制式名称に「対空戦車」と付くのはヴィルベルヴィント以降です。
イギリス軍: Mk.VI軽[[戦車]]を改造した軽対空戦車Mk.Iや、クルセーダー[[巡航[[戦車]]]]を改造したクルセーダーAAを実戦投入しました。
アメリカ軍: 装甲ハーフトラックを改造した自走式対空砲を運用しましたが、戦車車台のものは試作に終わり、M24軽[[戦車]]を改造したM19対空[[自走砲]]が終戦間際に配備されました。しかし、連合軍の航空優勢下では本来の任務での活躍は少なく、敵歩兵への射撃に利用されることが多く、本格的な実戦投入は朝鮮戦争からです。

戦後

ドイツ: レオパルト1戦車をベースにしたゲパルト自走対空砲を開発・運用しています。
日本: 陸上自衛隊は、74式[[戦車]]をベースにした87式自走高射機関砲を保有しています。ゲパルトと87式は、2門の機関砲や高度な追尾技術が共通していますが、追尾機器の配置に特許の関係で異なる点があります。しかし、87式は後発のため、より新しい技術が導入されています。
フランス: AMX-13DCAを配備し、その後継としてAMX-30DCAも開発しましたが、こちらはサウジアラビアへの輸出にとどまりました。これらは警戒レーダーを搭載していましたが、照準は光学式でした。
アメリカ: M19の後継としてM42ダスターがベトナム戦争に派遣されました。さらに高度な追尾技術を持つM247サージェント・ヨークも開発されましたが、高価格や「アメリカ軍は常に航空優勢下で戦う」というドクトリンから、M113[[装甲兵員輸送車]]改造のM163対空自走砲を運用するのみとなりました。現在では、M163も退役しています。
ソ連/ロシア: ソ連はZSU-57-2、そして世界初のレーダー搭載対空戦車であるZSU-23-4 シルカを開発しました。シルカは第四次中東戦争で多数のイスラエル機を撃墜したと言われています。また、アフガニスタン侵攻やチェチェン紛争では、輸送車列の護衛やゲリラへの攻撃にも使用されました。ロシア連邦軍では、2S6 ツングースカが主力で、機関砲と対空ミサイルを搭載し、より広範囲の航空機に対応できます。

まとめ

対空戦車は、機動力を活かした防空能力を持つ一方で、装甲の薄さやコストの問題などから、配備が難しい側面があります。技術の進歩により、ミサイルとのハイブリッド化や機関砲の射程延伸化が進められていますが、運用方法やコスト面での課題も残っています。

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