ケーレス (ミサイル)

ケーレス (Keres)について

ケーレスは、1980年代にイスラエル空軍のニーズに応じてアメリカのジェネラル・ダイナミクスによって開発された自走式ミサイルランチャーです。このシステムは、AMゼネラル製のM809 5tトラックに搭載され、AGM-78 スタンダード対レーダーミサイルのイスラエル版であるパープルパンチ（Purple Punch）を3連装で発射することができるよう設計されています。

開発背景

1973年の第四次中東戦争では、イスラエル空軍は敵の地対空ミサイルに苦しむ事となり、多くの航空機が失われました。このような状況から、イスラエル空軍はアメリカのAGM-45 シュライクミサイルを導入し、敵ミサイルに対抗しようとしました。しかし、このミサイルには空中発射が求められ、発射機自身が敵の攻撃にさらされるリスクが伴いました。そこで、1970年代中頃に地上発射型の自走式発射車両、キルションが開発されました。

キルションはスーパーシャーマンの車体にAGM-45のランチャーを搭載し、発射時の射程を延ばすためにロケットブースターを装着することで性能を向上させていました。しかし、AGM-45は射程が十分でなく、破壊力にも問題がありました。そのため、アメリカはAGM-78 スタンダードミサイルの開発に着手し、1975年にこれをイスラエルに提案しましたが、コスト面からイスラエル側は難色を示しました。

パープルパンチとケーレスの開発

その結果、イスラエルに向けた廉価版のAGM-78として、パープルパンチの導入が決定されました。このミサイルは、外観はAGM-78と似ているものの、内部のシステムを簡略化し、地上からの発射が可能なように設計されています。さらに、イスラエル空軍はこのミサイルを搭載する発射車両の開発をジェネラル・ダイナミクスに依頼しました。当初はキルションと同様にスーパーシャーマンを使用する予定でしたが、車両の老朽化が進行する中でM809トラックが選ばれました。

最終的に完成したケーレスは1982年にイスラエル空軍第153大隊に配備され、同年のガリラヤの平和作戦で実戦投入されました。ケーレスはパトリオットミサイルと同様にコンテナ収納式のミサイル発射機を搭載し、3連装形式で地対空ミサイルサイトに対抗しました。この作戦では、ケーレスが重要な役割を果たしました。

運用と退役後

ケーレスは、約20年間にわたり運用されましたが、1990年代に入ると退役しました。第153大隊は、最初はパルマヒム空軍基地に、のちにラマト・ダヴィド空軍基地に拠点を移し、その後解散に至ります。現在、無人航空機のIAI ハーピーが、その機能を引き継いでいます。

ケーレスは現在、イスラエル空軍博物館に展示されていますが、展示されている車両はM35 2.5tトラックのシャーシが使われていることに留意する必要があります。ケーレスは、過去の技術や戦術を反映した重要な防空システムであり、その歴史はイスラエルの空軍力の発展に大きく寄与してきました。

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