ゲーム・オン!

ゲーム業界の転換期に現れた総合ゲーム雑誌『ゲーム・オン!』

1993年から1996年にかけて、小学館から発行されていた総合ゲーム雑誌『ゲーム・オン!』は、日本のゲーム業界における激動の時代を象徴する存在でした。本誌は、それ以前のPCエンジン専門誌『月刊PCエンジン』の編集部を引き継ぐ形で創刊されました。

当時、PCエンジン市場は他ハードの台頭に押され、勢いを失いつつありました。1994年にはPlayStation、セガサターンなど次世代ゲーム機が続々と登場する予定で、ゲーム雑誌市場も激変の兆しを見せていました。この状況変化を敏感に察知した小学館は、新たな戦略として総合ゲーム雑誌の創刊を決断したのです。

『月刊PCエンジン』から『ゲーム・オン!』への移行は、編集部の人員やノウハウをそのまま引き継いだ形で行われました。しかし、誌面構成は大きく変わりました。『月刊PCエンジン』が左開きの横書きだったのに対し、『ゲーム・オン!』は右開きの縦書きを採用。これは、より多くの読者に親しみやすいレイアウトへの変更を示唆しています。また、誌面内容も変化しました。従来のゲーム紹介記事に加え、メーカーとのタイアップ企画を重視する姿勢が目立ちます。

特に、レッドカンパニー（現・レッド・エンタテインメント）やスクウェア（現・スクウェア・エニックス）といった有力企業との連携が顕著で、『ライブ・ア・ライブ』や『超魔法大陸WOZZ』といった人気ゲームの企画段階から関与し、小学館専属の漫画家がキャラクターデザインを担当するなど、強力なコラボレーションが展開されました。さらに、漫画や小説の連載も掲載され、多様なコンテンツを提供することで読者の獲得を目指しました。

PlayStationやセガサターンといった次世代ゲーム機の登場後には、これらのハードに関する記事も増加していき、時代の変化に対応しようとする姿勢が見られました。しかし、この変化は既存の読者層にとって大きな戸惑いをもたらすことになります。

『月刊PCエンジン』は、PCエンジン専門誌としてトップシェアを誇っていました。しかし、『ゲーム・オン!』の創刊と同時に廃刊という決断が下されます。これは、創刊号以降、『ゲーム・オン!』の記事の多くがスーパーファミコンソフトの紹介に充てられたことが大きな要因でした。

PCエンジンユーザーにとって、これは大きなショックでした。小学館からPCエンジンに関する情報が激減したことに対し、反発する声も多く聞かれたのです。その結果、多くの読者は『ゲーム・オン!』に移行せず、『電撃PCエンジン』（現『電撃G's magazine』）や『PC Engine FAN』といった競合誌へと流れていきました。

『ゲーム・オン!』は、ゲーム業界の激動期に生まれた雑誌として、その存在意義と複雑な経緯を物語っています。PCエンジン専門誌からの脱却というチャレンジと、既存読者層の反発という苦悩。両側面を理解することで、この雑誌の真の姿が見えてくるでしょう。当時のゲーム業界情勢と、雑誌媒体の戦略という観点から、『ゲーム・オン!』は貴重な研究対象として、今もなお注目を集めています。

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