コアイ・マラル

コアイ・マラル：モンゴル部族の伝説的な始祖

コアイ・マラル（Qo'ai maral、中国語: 豁埃馬闌勒）は、モンゴル部族の始祖として、『元朝秘史』などの史書に登場する伝説的な女性です。彼女はボルテ・チノという男性との間に子をもうけ、その子孫がモンゴル部族を形成したと伝えられています。

伝承

モンゴル語で語り継がれてきた伝承を漢字で音訳・翻訳した『元朝秘史』には、コアイ・マラルに関する伝説が記録されています。また、『集史』にもネクズ・キヤンに関する始祖伝承が記録されており、コアイ・マラルとボルテ・チノの伝承と共通点が見られます。どちらの伝承も、「男女が遠方からブルカン・カルドゥンを訪れ、その子孫がモンゴル部族の始祖となった」という点で共通しており、同じ始祖伝承から派生したと考えられています。

ネクズとキヤンはモンゴル部を構成する氏族集団の名称でもあり、12世紀末にはキヤト氏とタイチウト氏がモンゴル部で最も有力な集団でした。ネクズ氏はチノス（狼）氏という別名を持ち、ボルテ・チノ=ネクズ、コアイ・マラル=キヤンは、それぞれタイチウト氏とキヤト氏の族霊（オンゴン）、すなわち狼と鹿をモチーフとしたものではないかという説もあります。

1206年にチンギス・カンが任命した95名の千人隊長の中には「マラル」という人物がおり、コアイ・マラルと同様に「鹿」に由来する名前と考えられますが、出自や来歴は不明です。

コアイ・マラルの末裔

コアイ・マラルとボルテ・チノの子孫は以下の通りです。

1. バタチカン
2. タマチャ
3. コリチャル・メルゲン
4. アウジャン・ボロウル
5. サリ・カチャウ
6. イェケ・ニドン
7. セン・ソチ
8. カルチュ
9. ボルジギダイ・メルゲン - 妻子モンゴルジン・コア
10. トロゴルジン・バヤン - 妻子ボロクチン・コア
11. ドア・ソコル
12. ドブン・メルゲン - 妻子アラン・コア

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13. ベルグヌテイ
14. ブグヌテイ

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15. ブグゥ・カタギ
16. ブカトゥ・サルジ
17. ボドンチャル
18. バリン・シイラトゥ・カピチ
19. メネン・トドン - 妻子ノムルン
20. カチ・クルク
21. カイドゥ
22. バイ・シンコル・ドクシン
23. トンビナイ・セチェン
24. カブル・カン
25. オキン・バルカク
26. バルタン・バートル
27. モンゲトゥ・キヤン
28. ネクン・タイシ
29. イェスゲイ - 妻子ホエルン
30. テムジン
31. ジョチ・カサル
32. カチウン
33. テムゲ・オッチギン
34. ベクテル
35. ベルグテイ
36. ダアリタイ・オッチギン
37. クトクトゥ・モンゴル
38. クトラ・カン
39. クラン
40. カダアン
41. トドエン・オッチギン
42. セン・セチェレ
43. チャラカイ・リンクゥ
44. セングン・ビルゲ
45. アンバガイ・カン
46. チャウジン・オルテゲイ

コアイ・マラルの血筋は、モンゴル帝国の創始者であるチンギス・カンへと繋がっていきます。

参考文献

志茂碩敏『モンゴル帝国史研究 正篇』東京大学出版会、2013年
村上正二訳注『モンゴル秘史 1巻』平凡社、1970年
村上正二訳注『モンゴル秘史 2巻』平凡社、1972年
村上正二訳注『モンゴル秘史 3巻』平凡社、1976年
* 村上正二『モンゴル帝国史研究』風間書房、1993年

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