イェスゲイ

イェスゲイ・バアトル：チンギス・カンの父、モンゴル部族の英雄

イェスゲイ（Yesügei）は、12世紀中頃にモンゴル高原北東部で活躍したモンゴル部キヤト氏の首長です。彼は、後にモンゴル帝国を築き上げるチンギス・カンの父であり、キヤト・ボルジギン氏の祖として歴史に名を刻んでいます。バアトル（英雄）の称号を持つイェスゲイ・バアトルとして広く知られています。

生涯

イェスゲイは、カブル・カンの次男バルタン・バアトルの三男として生まれました。彼の生涯は、部族間の紛争と権力闘争の中で彩られています。

ホエルンとの出会い

イェスゲイは鷹狩りの最中、メルキト部族のイェケ・チレドゥが美しい女性ホエルンを娶る場面に遭遇します。彼女の美しさに惹かれたイェスゲイは、兄弟と共にイェケ・チレドゥを襲い、ホエルンを奪い去ります。ホエルンはイェスゲイの妻となり、後にテムジン（チンギス・カン）を産みます。

テムジンの誕生

イェスゲイがタタル部族を討伐した際、ホエルンはオノン河のほとりでテムジンを産みます。テムジンという名は、イェスゲイが捕虜としたタタル族の勇将にちなんで名付けられました。テムジンは、後にモンゴル帝国を築き上げるチンギス・カンとなるのです。

毒殺

テムジンが9歳の時、イェスゲイはテムジンに妻を娶らせるため、母方のオルクヌウト氏族を訪れます。帰路、タタル族の宴に招かれたイェスゲイは、過去の恨みから毒を盛られます。彼は何とか帰宅するも、毒が回り亡くなってしまいます。死の間際、イェスゲイはコンゴタン氏のモンリクにテムジンを託し、一族の未来を託します。

死後の影響

イェスゲイの死後、キヤト氏族は離散し、テムジン一家は苦難の道を歩むことになります。しかし、イェスゲイの遺志を継いだテムジンは、やがてモンゴル部を統一し、チンギス・カンとして世界に名を轟かせることになります。

追尊

モンゴル帝国が隆盛を極めた後、クビライ・カアンはイェスゲイを「烈祖神元皇帝」として追尊しました。これは、チンギス・カンの偉業を支えた父への敬意の表れでした。

トオリルとの関係

イェスゲイは、ケレイト部のトオリル（後のオン・ハン）が部族内の権力闘争で敗れた際、彼を支援しました。この恩義から、トオリルは後にテムジンを援助し、テムジンの勢力拡大に貢献しました。

家族

正室：ホエルン
テムジン（チンギス・カン）
ジョチ・カサル
カチウン
テムゲ・オッチギン
テムルン（女子）
側室
ベグテル
* ベルグテイ

イェスゲイの生涯は、モンゴル帝国の黎明期における部族間の紛争と英雄の台頭を描き出しています。彼の存在は、チンギス・カンの誕生と帝国の建設に不可欠であり、モンゴルの歴史において重要な役割を果たしました。

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