ダアリタイ・オッチギン

ダアリタイ・オッチギンについて

ダアリタイ・オッチギン（モンゴル語: ᠳᠠᠷᠢᠳᠠᠢᠥᠴᠢᠭᠡᠨ）は、モンゴル帝国の創設者、チンギス・カンの叔父にあたる重要な歴史的人物です。その名は、モンゴル語で「瘡を持つ者」を意味するダアリ（da'ari）と「炉の主」を示すオッチギン（Otčigin）が合わさったものであり、彼の出自や役割を象徴しています。

生い立ちと背景

ダアリタイは、モンゴル部キヤト氏の有力者であるバルタン・バアトルの末子として生まれました。兄にはモンゲトゥ・キヤン、ネクン・タイシ、イェスゲイ・バートルがいました。彼が誕生した時期、モンゴル部族間の争いが激化しており、「あまねきモンゴルのカン」を選ぶことが困難な状況が続いていました。

彼は、兄であるイェスゲイ・バートルを支えて活動し、『元朝秘史』によれば、イェスゲイがホエルンを奪う際、彼女を慰める役割を果たしたとされています。しかし、イェスゲイがタタル部に襲撃されて亡くなると、キヤト氏は分裂に直面します。

チンギス・カンとの関係

後に、イェスゲイの長子でダアリタイの甥であるテムジン（後のチンギス・カン）が成長し、かつての民を再統合すると、ダアリタイはテムジンをモンゴルのカンとして支持します。この時期のチンギス・カンの軍勢は「十三翼」と呼ばれる部隊編成によって形成され、ダアリタイはその第9翼を率いていました。この部隊の指揮下には、純モンゴルのドゥグラトや隷属民のネクズ、各種の遊牧集団が含まれていました。

しかし、チンギス・カンが部族間の伝統的な絆を解体して絶対的権力を確立しようとすると、ダアリタイらキヤト氏の長たちは次第に対立するようになります。1202年にはタタル部への出征の際、ダアリタイが軍法を無視して掠奪を行った結果、チンギス・カンから厳しく叱責を受けます。これをきっかけに、彼らはチンギス・カンから離れ、ケレイト部のオン・カンに仕官しました。

その後、ダアリタイらはオン・カンとの連携でチンギス・カンに対抗しましたが、最終的には内部の対立により勢力が衰え、チンギス・カンに降伏する羽目に至ります。

ダアリタイの末路

ダアリタイの最期については、歴史書ごとに異なる記録が残されています。『集史』では、彼が降伏した後、チンギス・カンの命によって処刑されたと伝えていますが、『元朝秘史』によると、彼は一度は処刑される運命にあったものの、チンギス・カンが取りやめたとのことです。ただし、後者の記述は物語性が強いため、より客観的には『集史』の記述が信頼されることが多いです。

処刑に際して、ダアリタイの部下や遊牧民は新たな主に与えられ、その隷属民となったとされています。ダアリタイ・オッチギンの物語は、モンゴル帝国の興亡における一つの側面を象徴しており、彼の役割や運命はモンゴル史において重要な意味を持っています。

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