コアジサシ

コアジサシ（小鯵刺）

コアジサシは、チドリ目カモメ科に属する鳥で、学名はSternula albifronsです。属名のSternulaは、小さいアジサシを意味します。その名の通り、アジサシよりも小型で、ツバメのような細く尖った翼と尾羽が特徴です。

形態

全長約24cmで、ツグミやヒヨドリと同程度の大きさです。翼を広げると約53cmになります。夏羽では、頭部が黒く、額、喉、腹が白く、体の他の部分は薄い灰色をしています。嘴は黄色く、脚は橙色をしています。冬羽になると、嘴と脚は黒くなり、額の白い部分が広がります。

分布

ユーラシア大陸の中緯度地域で繁殖し、アフリカからオーストラリアにかけての沿岸部で越冬します。また、カリブ海沿岸域やハワイ諸島にも分布しています。日本では、本州以南に夏鳥として渡来し繁殖しますが、繁殖に適した場所の減少に伴い個体数が減少しています。

東京都大田区の森ヶ崎水再生センターでは、屋上での営巣が確認され、NPO法人などが東京都下水道局と協力して、コアジサシの営巣環境を整備する保護活動を行っています。これには、草むらでの営巣を避けるコアジサシの習性に合わせた除草や、カラス、ノネコ、アライグマ、ハクビシンなどの天敵対策が含まれます。

分類

以前はアジサシ属（Sterna）に分類されていましたが、ミトコンドリアDNAの研究により、現在はコアジサシ属（Sternula）に分類されています。主要なチェックリストでは、2024年時点で全てSternulaとしています。

亜種については、4亜種または5亜種とされており、主要チェックリスト間でも統一されていません。日本で見られるコアジサシは、Sternula albifrons sinensis (Gmelin, 1789) です。

生態

海岸や河川などの水辺に生息し、水中にダイビングして魚を捕食します。この行動から、アジやアユなどの魚にちなんで「アジサシ」という名前が付けられたと考えられています。「アユタカ」や「アユサシ」という別名もあります。獲物を狙う際には、短時間ホバリングすることもあります。

繁殖期には、オスがメスに獲物をプレゼントする「求愛給餌」が見られます。巣は、川原、砂浜、埋立地などに集団繁殖地（コロニー）を作り、外敵の侵入に備えます。地面に浅いくぼみを作り、通常2～3個の卵を産みます。卵と雛は周囲の石に紛れるような斑模様をしています。

種の保全状況評価

国際自然保護連合（IUCN）は、コアジサシを軽度懸念（LC）に指定しています。日本では、環境省レッドリストで絶滅危惧II類（VU）に指定されており、多くの都道府県でレッドリストに指定されています。

絶滅危惧I類（CR+EN） に指定されている都道府県
青森県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、富山県、石川県、福井県、長野県、静岡県、愛知県、三重県、大阪府、和歌山県、鳥取県、岡山県、広島県、徳島県、香川県、高知県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県

絶滅危惧II類（VU） に指定されている都道府県
岩手県、宮城県、茨城県、岐阜県、京都府、兵庫県、奈良県、島根県、山口県、愛媛県、福岡県、佐賀県、沖縄県

準絶滅危惧（NT） に指定されている都道府県
新潟県、山梨県、滋賀県

自治体指定の鳥

コアジサシは、以下の自治体で指定の鳥となっています。

市
千葉市（千葉県）
小田原市（神奈川県）
町
横芝光町（千葉県）
村
吉川村（高知県、現在は合併により消滅）

参考文献

中川雄三（監修） 編『ひと目でわかる野鳥』成美堂出版、2010年1月。ISBN 978-4415305325。

関連項目

アメリカコアジサシ
アジサシ
日本の野鳥一覧

外部リンク

絶滅危惧種情報 コアジサシ（生物多様性センター）
NPO法人 リトルターン・プロジェクト（ブログ） - 東京都森ヶ崎水再生センターの屋上にあるコアジサシ営巣地の様子を随時報告しています。

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