コウヤワラビ

コウヤワラビ（Onoclea sensibilis L. var. interrupta Maxim.）の詳細

コウヤワラビは、湿地環境に自生する特異なシダ植物であり、その姿は普通のシダ類とは一線を画しています。この植物は、膨れた羽片と球形の胞子嚢を持つ小羽片を豊かに並べた胞子葉が目を引きます。

特徴

コウヤワラビは夏緑性の草本で、根茎は長く、地中を横に広がります。根茎の直径は3-6mmで、初めは褐色の鱗片に覆われていますが、成長するにつれて裸になっていきます。葉には2つの明確なタイプがあります。

栄養葉は葉柄が8-30cmの長さがあり、色は藁色から褐色を帯びた部分を持ちます。葉身は単羽状に深く裂けており、草質で淡い黄緑色から淡緑色をしています。全体の形は広卵形または三角状の楕円形で、長さは8-30cm、幅は8-25cmです。羽片は5-11対あり、披針形で先端が丸く、基部に向かって徐々に狭まります。下方の裂片は楔形であり、時には柄を持ち、上部の片では中軸の翼に流れ、他の羽片と繋がる形式になっています。羽片の縁は滑らかで、稀に鋸歯が見られます。これらの葉の外観は柔らかで、まるで「海藻」や「ワカメ」に似ているとの声もあります。

胞子葉は栄養葉と同じか、やや高くなります。この胞子葉の葉身は二回羽状複葉ですが、外見は一回羽状に見えます。胞子葉は秋に出現し、初めは鮮やかな緑色ですが、次第に黒くなり、球状の小羽片が並ぶ姿が特に印象的です。

高野山との関連

本種の名前は高野山に由来し、この植物がそこに存在していると考えられていました。しかし、実際には高野山では見つかっておらず、過去の記録もありません。高野山には多くの植物研究者が訪れており、見落としがあるとは考えにくいですが、『野山草木通志』には本種の図が載せられており、「ゼンマイカグマ」と称されています。この記録によると、紀美野町ではこの植物が見られることが確認されています。

分布と生育環境

コウヤワラビは日本全国に分布しており、北海道から九州まで見られますが、四国では発見されていません。日本周囲では朝鮮や中国、及び一部の島嶼部にも存在します。通常、このシダは湿り気のある明るい場所を好み、沼地や水田の畦に群生することが多いです。根茎は広がりやすく、大きな群落を形成することが特徴です。

分類

規則的な形状を持つコウヤワラビは、かつては単独でコウヤワラビ属として分類されていましたが、現在はイヌガンソクもこの属に含められ、この2種に限られています。日本産のコウヤワラビは北米産とは異なり、胞子葉の小羽片の間に隙間があります。このことから、日本産のものは変種として区別されています。

結論

特に商業的な利用はされていないコウヤワラビですが、湿地帯の生態系において重要な役割を果たしている植物です。これからもその独特の姿を保ち、研究や観察の対象として愛され続けることでしょう。

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