コオイムシ科

コオイムシ科（学名：Belostomatidae）は、カメムシ目カメムシ亜目に属する水生昆虫のグループです。この科の多くの種は、淡水環境、具体的には池や沼、湿地、あるいは流れの緩やかな小川などに生息しています。

世界全体で見ると、現在までに約170種類のコオイムシ科昆虫が知られており、特に中南米を含む新熱帯区に多様性が集中しており、110種以上がこの地域で発見されています。アフリカ大陸や北米大陸を含む新北区でもそれぞれ20種を超える種が見られますが、他の地域での生息種数は比較的少ない傾向にあります。体長には大きな幅があり、ほとんどの種は2センチメートルに満たない比較的小型なものですが、最大級の種では12センチメートルを超える巨大なものも存在します。英語圏では、本科に属する昆虫はしばしば「ジャイアントウォーターバグ（Giant water bug）」と総称されますが、これは特定の種を指す名称ではなく、この科に属する大型の水生カメムシ全般に対する一般的な呼び名として使われています。

現生のコオイムシ科は、大きく分けて二つの亜科に分類されています。一つはコオイムシ亜科（Belostomatinae）、もう一つはタガメ亜科（Lethocerinae）です。かつては、Horvathinia属のみを含むHorvathiniinae亜科を独立させる見解もありましたが、近年の分子生物学的な研究などを踏まえた分類体系では、Horvathinia属はコオイムシ亜科内のLimnogeton属やHydrocyrius属と近縁であることが示され、コオイムシ亜科の中に含められるのが一般的となっています。このように、生物の分類は常に研究によって見直され、更新されていきます。

特に目を引くのは、オスが孵化するまでの間、卵を保護・世話するという極めて珍しい習性です。この行動様式は、本科内の亜科によって異なります。コオイムシ亜科に属する種では、メスが産んだ卵をオスの背面にしっかりと固定し、オスは卵を背負ったまま水中での活動を続けます。卵が孵化するまでの数週間、オスはこの「卵のう」とも呼ばれる状態を維持し、卵に新鮮な水が供給されるよう移動したり、乾燥を防いだりする役割を担うと考えられています。一方、タガメ亜科の種では、メスは水生植物の茎など、水面上の露出した場所に卵塊を産み付けます。これに対し、オスは卵塊のすぐ近くに留まり、卵に定期的に水をかけたり（給水）、天敵や他の雌個体から卵を守ったりする役割を果たします。このように、オスが子育ての中心を担うという共通の特徴を持ちながらも、その具体的な方法は生息環境や形態に合わせて進化していることがわかります。

日本列島においては、コオイムシ科の昆虫として、以下の4属5種が確認されています。これらの中には、比較的小型な種から、日本最大の水生昆虫として知られる大型種までが含まれています。

コオイムシ (Appasus japonicus)
オオコオイムシ (Appasus major)
タイワンコオイムシ (Diplonychus rusticus)
タガメ (Kirkaldyia deyrolli)
* タイワンタガメ (Lethocerus indicus)

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