コクガン

コクガン (Branta bernicla)

コクガンは、カモ目カモ科に属する鳥類であり、その特徴的な黒い羽衣から名付けられました。この種は渡り鳥として知られており、繁殖地と越冬地を移動する行動が見られます。彼らは地球上の様々な地域で大きなグループを形成しながら生活しています。

分布と亜種

コクガンにはいくつかの亜種があり、それぞれ異なる繁殖地と越冬地を持っています。主な亜種は以下の通りです：

• - B. b. bernicla (ネズミガン): 主にシベリア西部で繁殖し、ヨーロッパやイギリスへと越冬します。
• - B. b. hrota (シロハラネズミガン): カナダ東部やグリーンランドで繁殖し、冬には北アメリカ大陸の東部やイギリスに移動します。
• - B. b. nigricans (クロネズミガン): シベリア極東部やカナダ西部、アラスカ州で繁殖し、冬季には北アメリカ西部に向かいます。
• - B. b. orientalis (コクガン): シベリア東部で繁殖し、朝鮮半島南部や日本の一部地域、中国の渤海沿岸に越冬します。特に、北海道にある野付半島・野付湾は約8000羽のコクガンが集まる生息地となっています。

2021年には、日米中共同研究グループがコクガン14羽に発信器を取り付けて放鳥し、彼らが中国の山東半島や日本の国後島へ移動したことが記録されました。また、伊豆沼・内沼環境保全財団もコクガンの渡りを追跡し、北極海のファデエフスキイ島まで到達する様子が確認されています。

形態

コクガンは全長が55〜66センチメートル、翼開張は115〜125センチメートルに達します。特に目を引くのはその羽衣で、頭部から胸部までは黒く、頸部には白い首輪状の斑紋があります。この斑紋の中にも黒い斑点が見られ、全体的に白と黒のコントラストが美しいです。体の側面には白と淡黒褐色の縞模様があり、下腹部や尾羽には白い羽毛があります。また、くちばしや後肢は黒く、幼鳥とは違い、成鳥は特徴的な白い斑点を持つことが特徴です。

各亜種の特徴

• - ネズミガン: 腹部が暗色。
• - シロハラネズミガン: 腹部が白。
• - クロネズミガン: 体側面の淡色部が不明瞭。
• - コクガン: 色味が濃く、体側面の淡色部が明瞭。

生態

コクガンは繁殖地ではツンドラなどに生息し、越冬地では内湾や海岸、干潟、湖沼など多様な地形に見られます。繁殖を行わない季節には、群れを作って生活します。食物は海草や海藻を中心としており、逆立ちして海中の植物を食べる姿が観察されます。繁殖期には6月に最も多くの場合4個の卵を抱卵し、約22から25日で孵化します。雛は孵化後、40〜50日で飛翔できるようになります。

人間との関係

コクガンは生息地の軍事利用や乱獲の影響を受け、生息数が減少しています。日本では1971年に国の天然記念物に指定されており、保護措置が行われています。現在、この種類は環境省レッドリストで絶滅危惧II類に位置付けられており、さらなる保護が求められています。

コクガンは、その美しい外見と繁殖行動の複雑さにより、多くの人々に愛されている鳥です。彼らが生息する環境を守ることで、未来の世代にもこの魅力的な存在を見せていくことが重要です。

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