ココモ (曲)

ココモ：ザ・ビーチ・ボーイズの奇跡の復活とカリブ海の調べ

1988年、ザ・ビーチ・ボーイズは、映画『カクテル』の主題歌として発表したシングル「ココモ (Kokomo)」で、音楽シーンに旋風を巻き起こしました。この曲は、彼らが1966年の「グッド・ヴァイブレーション」以来となる22年ぶりの全米ビルボードチャート1位獲得という快挙をもたらしたのです。しかし、「ココモ」は単なる商業的な成功作ではありません。楽曲制作からミュージックビデオ、そしてヒット後の展開まで、数々の興味深いエピソードが詰まっているのです。

楽曲制作：ビーチ・ボーイズと豪華アーティストたちの競演

「ココモ」は、マイク・ラヴ、テリー・メルチャー、ジョン・フィリップス、スコット・マッケンジーという豪華な顔ぶれによって制作されました。ジャマイカのリゾート地、現在のSandals Cayをタイトルに冠したこの曲は、スティール・ドラムを効果的に使用した、陽気でリラックスしたムードが魅力です。リード・ボーカルはマイク・ラヴとカール・ウィルソンが担当し、特徴的なサウンドは、プロデューサーであるメルチャー自身のスティール・ドラム演奏、セッション・ドラマーのジム・ケルトナーによるドラム、ヴァン・ダイク・パークスのアコーディオン、そしてビーチ・ボーイズのサポートメンバーであるジェフリー・フォスケット、エド・カーターらによる演奏によって生み出されました。意外なことに、ビーチ・ボーイズのメンバーであるブライアン・ウィルソンはこのレコーディングには参加していませんでした。

ミュージックビデオと映画『カクテル』との連携

「ココモ」のミュージックビデオには、ブライアンを除くメンバーに加え、俳優のジョン・ステイモスも参加しています。『カクテル』という映画とのタイアップによって、楽曲のプロモーションは強力なものとなり、世界中へと広まりました。シングル盤は、映画のサウンドトラック盤の権利を持つエレクトラ・レコードからリリースされましたが、後にビーチ・ボーイズがキャピトル・レコードと再契約したことで、発売権もキャピトルに移り、「スティル・クルージン」や「サムホエア・ニア・ジャパン」といった後続シングルにもカップリング曲として収録されることになります。興味深いのは、このシングルがビーチ・ボーイズ単独のものではなく、リトル・リチャードとのスプリット盤としてリリースされた点です。B面にはリトル・リチャードの代表曲「トゥッティ・フルッティ」が収録され、さらに12インチ・シングルにはジョージア・サテライツの楽曲も加えられた3曲入りという形態も存在しました。

大ヒットとその後：アルバム制作、カバー、そして『フルハウス』

「ココモ」はアメリカとオーストラリアで1位を獲得する大ヒットとなり、ビーチ・ボーイズは急遽アルバム『スティル・クルージン』の制作に乗り出しました。この曲は、その後も多くのアーティストによってカバーされ続けました。ソル・デ・メヒコ、バハ・メン、キングズ・シンガーズ、GREAT3 with 佐橋佳幸、Ken Yokoyama、DEEN、NONA REEVESなど、ジャンルを超えた様々なアーティストが「ココモ」を独自の解釈で演奏しています。また、テレビドラマ『フルハウス』では、メンバー全員がゲスト出演し、「ココモ」を披露しました。この時、レコーディングに参加していなかったブライアンも一緒に歌っていたというエピソードは、バンドの絆の深さを示しています。さらに、1989年にドイツでリリースされた「カリフォルニア・ドリーミン」のCDシングルには、ブライアンもバッキング・ヴォーカルで参加したスペイン語バージョンが収録されているという、隠れた事実もあります。

まとめ：時代を超えて愛される夏のアンセム

「ココモ」は、単なるヒット曲を超えた、ザ・ビーチ・ボーイズの歴史において重要な一曲と言えます。映画とのタイアップ、豪華な参加ミュージシャン、そして世界的なヒットによるバンドの再活性化など、その成功の裏には様々な要素が絡み合っています。スティール・ドラムの音色と陽気なメロディーは、今もなお多くの人々の心に夏の記憶を呼び起こし、時代を超えて愛されるアンセムとして、その輝きを失うことはありません。

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