コスモス167号

コスモス167号の概要

1967年、ソビエト連邦が宇宙開発競争の真っただ中に送り出した「コスモス167号」（ロシア語: Космос-167）は、本来であれば神秘の惑星、金星を目指す壮大な探査ミッションを担うはずでした。しかし、宇宙空間への投入過程で予期せぬ事態が発生し、最終的にその計画は頓挫。目的地へ到達できなかったこの宇宙機は、ソ連の宇宙機識別システムにおいて、汎用的な「コスモス衛星」の一つとして分類されることになりました。これは、本来の目的を達成できなかったり、その情報が非公開であったりする宇宙機にしばしば付与される名称です。

飛行経過の詳細

「コスモス167号」の宇宙への旅は、1967年6月17日、当時のソビエト連邦、現在のカザフスタン共和国にある広大なバイコヌール宇宙基地から始まりました。ソ連の信頼性の高いモルニヤ-Mロケットの推進力によって、探査機はまず地球を周回する待機軌道へと順調に投入されました。

しかし、ここからが問題でした。地球軌道から金星へと向かう惑星間軌道へ移行するためには、打上げロケットの上段部分が再び正確に燃焼し、必要な加速を与える必要がありました。残念ながら、この上段ロケットに技術的な不具合が発生したため、探査機は金星へ向かうための遷移軌道に乗ることができませんでした。金星への道が閉ざされた「コスモス167号」は、そのまま地球周回軌道上に留まることを余儀なくされました。

短いミッションと終焉

金星への旅を断念した「コスモス167号」の寿命は、非常に短いものでした。地球軌道を回り始めてからわずか8日後の1967年6月25日、「コスモス167号」は地球の大気圏に再突入し、燃え尽きてその短いミッションを終えました。打上げからわずか一週間あまりでの喪失は、当時の宇宙開発が直面していた技術的な困難とリスクを改めて浮き彫りにしました。

ベネラ4号との関連性

興味深い点として、「コスモス167号」は、そのわずか5日前の1967年6月12日に打上げられ、その後に金星大気での観測に成功したソビエト連邦の著名な金星探査機「ベネラ4号」と、設計が非常に類似していたと考えられています。同じ世代、同じ設計思想に基づいて開発された探査機でありながら、一方は歴史に残る成功を収め、他方は打上げ初期の失敗により失われるという、宇宙開発における明暗を分ける事例となりました。「コスモス167号」の短い生涯は、ソビエト連邦が進めていた活発な金星探査計画、特に「ベネラ計画」の背景と、それに伴う挑戦と挫折の一端を示す記録として、宇宙史にその名を留めています。

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