コチニール色素

コチニール色素とは

コチニール色素は、エンジムシという昆虫から抽出される天然の赤色色素です。古くから染料や食品着色料として利用されてきました。別名としてカルミン、クリムゾンレーキなどがあります。食品添加物としての表示名は「コチニール色素」または「カルミン」です。

製法と種類

コチニール色素は、エンジムシのメスを乾燥させ、その体内に蓄積された色素成分を水やエタノールで抽出して作られます。主成分はカルミン酸と呼ばれるアントラキノン誘導体です。

色素を抽出した後、アルミニウム塩と結合させて不溶化すると、コチニールレーキという赤色顔料になります。かつては絵具のクリムソンレーキやカーマインの原料として使われていましたが、近年では合成アントラキノンレッドに代替されることが多くなっています。ただし、一部メーカーでは現在もコチニールレーキを使用した絵具を製造しています。

歴史

ルネサンス期には、ケルメスカイガラムシから得られるカルミンが高級な毛織物染料として珍重されました。中南米がスペインに征服されると、コチニール色素の原料となるエンジムシが大量に養殖され、スペインはコチニールの正体を秘匿することで巨額の富を築きました。

食品添加物としての利用

コチニール色素は、清涼飲料水、菓子類、ハム・ソーセージ、かまぼこなど、幅広い食品の着色料として使用されています。過去にはリキュール「カンパリ」の着色にも用いられていました。

加熱や発酵に対して比較的安定ですが、pHによって色調が変化します。酸性下ではオレンジ色、アルカリ性下では赤紫色を呈します。また、タンパク質が豊富な食品では紫色に変色することがあるため、ミョウバンなどの色調安定剤を併用することがあります。

FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会は、コチニールレーキの一日摂取許容量を体重1kgあたり5mgと評価しています。ただし、動物由来であるため、菜食主義者や宗教上の理由で摂取を避ける人もいます。

各国での規制状況は以下の通りです。

アメリカ: 使用規制なし
EU: E120として食品ごとに使用が認可
日本: 既存添加物として使用可能。コチニールレーキは使用不可

アレルギーについて

コチニール色素（カルミン）を使用した食品や化粧品によって、アレルギー反応が報告されています。症状としては、皮膚の腫れ、喘息、アナフィラキシーショックなどがあります。

アレルギーの原因物質としては、エンジムシ由来のタンパク質や、色素自体がハプテン抗原として反応する可能性が指摘されています。

化粧品に含まれるカルミンが原因でアレルギーを発症した場合、使用部位の皮膚が腫れ上がることがあります。その場合は、カルミン入りの化粧品の使用を中止することが推奨されます。

その他の情報

コチニール色素は、酢酸カーミン溶液という染色固定剤にも使用されています。

参考文献

エイミー・B.グリーンフィールド, 佐藤桂『完璧な赤 : 「欲望の色」をめぐる帝国と密偵と大航海の物語』早川書房、2006年
渡辺弘之『カイガラムシが熱帯林を救う』東海大学出版会、2003年

外部リンク

コチニール色素 - ウェイバックマシン
酢酸カーミンとコチニール色素 - ウェイバックマシン
コチニール色素（横浜市衛生研究所 - 食品衛生情報）

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