アントラキノン

アントラキノン

アントラキノン（anthraquinone）は、アントラセンを基本骨格とする有機化合物であり、特有の構造から様々な用途に利用されています。

概要

アントラキノンは、一般的に黄色から薄い灰色、または緑がかった灰色の結晶性粉末として存在します。IUPAC命名法ではアントラセン-9,10-ジオンと表されますが、9,10-アントラセンジオン、アントラジオン、アントラセン-9,10-キノンなどの別名でも知られています。

水やアルコールには溶けにくい性質を持ちますが、ニトロ[[ベンゼン]]やアニリンには溶解します。また、通常の条件下では化学的に非常に安定しているという特徴があります。

自然界では、アロエ、センナ、ダイオウ、カスカラなどの植物に含まれているほか、菌類、藻類、昆虫などにも存在し、これらの生物の着色に関与しています。天然のアントラキノン誘導体には、下剤として作用するものが多いことが知られています。また、生物由来ではない生成経路も存在し、鉱物の一種であるヘール石（Hoelite）として産出されることもありますが、その産出例は稀です。

化学的性質

アントラキノンは、いくつかの合成法で製造することができます。

アントラセンの酸化: アントラセンを酸化する方法。
フリーデル・クラフツ反応: 塩化アルミニウムを触媒として、ベンゼンと無水フタル酸を縮合させる方法。この反応では、まずo-ベンゾイル安息香酸が生成し、それが自発的に環化してアントラキノンとなります。
ディールス・アルダー反応: ナフトキノンと1,3-ジエンを用いる方法。

また、アントラキノンの古典的な反応として、バリー・スコール合成が知られています。これは、グリセロールとアントラキノンを反応させることでベンズアントロンを生成する反応であり、銅と硫酸の存在下でキノンが還元され、グリセロールが付加されるという仕組みです。

工業的な応用

アントラキノンは、その構造が多くの天然色素の骨格となっているため、アリザリンなどの色素の原料として広く利用されています。また、製紙業界では、パルプ製造の触媒としても重要な役割を果たしています。その他、鳥害対策として鳥除け剤に用いられることもあります。

アントラキノン誘導体である2-エチルアントラキノンは、過酸化水素を工業的に製造する際に利用されています。

関連項目

大腸黒皮症

外部リンク

日本国 国立環境研究所 Webkis-plus アントラキノン
国際化学物質安全性カード アントラキノン (ICSC:1605) 日本語版, (英語版)

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